踊り場に来た米韓同盟:GSOMIA破棄と破棄延期の真意
結局、彼らにとって重要なのは、米中をはじめとする大国の影響下から離脱する事であり、しかしながら現状における韓国の力は依然限られている。だからこそ彼らは一旦日韓GSOMIAを巡る問題でアメリカに屈服し、その関係を維持する事を選択した。しかしその事は彼らがこれからも同様の選択を行うことを意味しない。アメリカとの関係に依存するだけでは、従属の度が増すばかりで、「自主自立」は得られない。だからこそ、限られた資源は、現在の同盟関係の維持よりも、将来の軍事力の増強に用いたい。そうして力を十分に整えてから、徐々に「自主独立」へと向かうのだ。
こうして考えれば、現在の韓国で起こっている事は整合的に理解する事ができる。そしてその事は、米韓同盟が今まさに一種の「踊り場」に差し掛かっていることを意味している。2019年11月、日韓GSOMIAは半日足らずの僅かな時間的「余裕」を残したタイミングで、アメリカの強い圧力の下、辛うじて破棄されることを免れた。だが、「自主自立」を求める動きの高まりの中、韓国の揺らぎは大きくなっている。日韓GSOMIAを巡る交渉の後には、トランプ政権にとってより重要な、在韓米軍駐留経費増加を巡る交渉が待っている。果たして韓国政府は、ここでアメリカとの関係を重視して一定以上の負担増を受け入れるのか、それとも「自主自立」を求めて自ら、在韓米軍の削減を受容する方向に舵を切っていく事になるのか。米韓同盟は大きな岐路にさしかかっているのかも知れない。
12月3日号(11月26日発売)は「香港のこれから」特集。デモ隊、香港政府、中国はどう動くか――。抵抗が沈静化しても「終わらない」理由とは? また、日本メディアではあまり報じられないデモ参加者の「本音」を香港人写真家・ジャーナリストが描きます。
韓国・尹錫悦大統領に迫る静かなる危機と、それを裏付ける「レームダック指数」とは 2024.11.13
「ハト派の石破新首相」という韓国の大いなる幻想 2024.10.16
全斗煥クーデターを描いた『ソウルの春』ヒットと、独裁が「歴史」になった韓国の変化 2024.09.10
「ディオール疑惑」尹大統領夫人の聴取と、韓国検察の暗闘 2024.08.06
韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳 2024.07.03
「出生率0.72」韓国の人口政策に(まだ)勝算あり 2024.06.05
総選挙大勝、それでも韓国進歩派に走る深い断層線 2024.05.08