コラム

日本人の知らないレンガ建築の底知れない魅力

2024年09月21日(土)19時30分

つまり、この通りにはさまざまなレンガ造りをしたいろいろと異なる種類の家々があるということだ。赤レンガが一般的だが、その中には非常に装飾的なレンガ細工や、むしろ機能的なものもある。

白い色のレンガもあるが、明らかにこちらのほうが高価だろう。よく見るとクリーミーで、ピンク色がかっている。赤レンガは鉄鉱石から色付けられているのに対し、この色はゴールト粘土で色づいている。

僕の家は、ところどころに趣向が凝らされた赤レンガ造りだ。家の側面には小さな飾りがあるから、遠くから初めてこの家を訪ねてくる人には「ホワイトダイヤモンドが付いた家だよ」と言えば目印になったことだろう(各住宅の番地がまだちゃんと付いていなかった時代の建物なのだ)。

その時代の家々には煙突もあるが、今ではほとんどの場合、不要になっている。今ではどの家もセントラルヒーティングを備えているのだ。でも煙突は(家の中の暖炉と同じように)その家の特徴の一部といえる。

不要な煙突を取り外す気にはなれず

ある時、僕は屋根にソーラーパネルを設置しようと考えていたのだが、建築業者は煙突のせいで影ができて発電量が減ってしまうから煙突を取り外しましょうか、と提案した。僕は、まるで彼が僕の鼻を切り落としましょうかと言ったかのように「気分を害された」。

この感情は奇妙だった。先ほど述べたように煙突は今や不要だし、ある意味厄介とすら言えるのだから――煙突のせいで少し雨が入ってくるし、常に穴が開いているから熱が逃げるし、時には鳥が中に巣を作ることもあってそのせいで汚れたりする。

そこで、雨と鳥を防止するために煙突に「ふた」をしてもらった。高い家のさらにてっぺんまで上って、かなり手を伸ばして作業しなければならなかったので、この仕事を頼んだ屋根職人が肩を少し痛めてしまったことを思い出す。

また、熱が逃げるのを防ぐために、下から「ブロック」もした(特殊なバルーンを使うのが一般的な方法だ)。そのため、煙突のメンテナンスに手間と費用がかかった。

なんにしろ、今日レンガについて書こうと思ったのは、昨日家に帰る途中、これまで何度も前を通っていた教会の前を通りかかったのだが、この時には秋の夕陽が、まるで建物に(文字通り)新たな光が差すかのように当たっていたからだ。そして、珍しい「まだら模様」のレンガ造りにはまさに心を奪われた。おかげでその日の忘れられない出来事になった。

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まだら模様のレンガ造りに思わず見入ってしまった近所の教会 COLIN JOYCE

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プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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