極右政党を右派ポピュリズムへと転換させたルペンの本気度(後編)
ちなみに、ルペン氏率いる「国民戦線」が主張する「移民排斥」が日本国内では誤解されることが多いようですが、彼らのいう「移民排斥」はいわゆる民族主義的なものではありませんし、「純血主義」などとは全く違います(移民は次々と仏国籍になるため、昔からフランスの住民人口中、外国人の比率は約6~7%)。両親とも外国人で本人も移民でも、フランス国籍になっていれば、就職や公共住宅への入居などの際には「国民優先」の方針で「優先」される側になるという具合です。
前述の通り、本当の意味で人種差別的だったのはかつての国民戦線の党の創始者であり、その頃の残党は党内に多少残ってはいるにせよ、マリーヌが党を引き継いだ現在、かつての国民戦線のイメージからは随分と変わってきた点が日本国内の報道では欠落しているようです。
ところで、最新の動向では、2位のマクロン氏の勢いがここのところ停滞気味になり、代わりに左派のメランション氏の勢いが増してきています。「秀才」マクロンは若さと新しさでブームになりましたが、皮相さがバレてきているそうです。ルペン対マクロンが差し詰めトランプ対クリントンなら、ルペン対メランションはトランプ対サンダースの様相となります。
【参考記事】大統領選挙に見るフランス政治のパラダイムシフト
メランション氏についてはルペン氏以上に日本での情報が枯渇していますので、その人となりや政治信条に関しては、つい数日前に開催されたマルセイユでの選挙集会の様子を紹介するのが端的かと思われます。地中海を背景に立ち、昨年シリアから海を渡って逃げてきて溺死した難民たちのことから語り、皆でしばし黙祷。
途中では、「メランション!メランション!」と歓呼する聴衆をたしなめ、「あなた方が支持するのはメランションではなく、『共通の未来』(メランションの団体「屈しないフランス」は政策を説明した冊子を『共通の未来』と題しています)という政策プログラムなんだぞ、あなた方自身が自立して行動しなきゃならんのだ」と発言。
最後は「平和」のための候補として立つと宣言し、経済危機に苦しむギリシャへの連帯のしるしに、ギリシャ人詩人が非常に具体的な表象で平和を歌う長い詩(詩人ヤニス・リッツォスの詩)を朗読して、それをもって締めくくるという具合でした。
「もし決戦がルペンVSメランションならば、時代は完全に反グローバリズム。その上で、特殊主義と普遍主義が対決する人間観の闘いになる」との堀教授のツィートは、そのマルセイユでの演説を受けてのコメントでもあります。
メランション氏の支持率急上昇で仏大統領選の行方はますます混沌とし、予測不能の様相を呈してきましたが、「まさか」の展開で仮にルペン氏が勝利となった場合には、右派ポピュリズム(政治思想・姿勢)は政権に手が届くのに、なぜ左派ポピュリズムは及ばないのかがあらためて問われることになりそうです。
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