コラム

ビジネスパーソンが好きな、実は「教養」に最も遠い教養本

2021年08月11日(水)12時34分

すぐ手に入る答えを探し求めている

いったい、どうしてこのような本が求められるに至ったか。こうしたマーケットが隆盛する背景には、これもしばらく前から続いている「雑談力」ブームと結び付いているように思える。適当に話を転がし、本題に入る前に場を温め、相手との関係をつくる力が今という時代には必要らしく、こうした本はそのネタ元になるのだろう。

「教養」を求めること自体に罪はない。だが、昨今のビジネスパーソンはとにもかくにも市場からさまざまな情報で圧迫され、すぐ手に入る答えを探し求めているように見える。成功の条件を探し、情報を収集し、必要な力を身に付け、止まることなく動き続けよ、と説かれる。情報に流されず、立ち止まって考えない限り、「学問、知識などによって養われた品位」が身に付くことなどないと思うのだが......。

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プロフィール

石戸 諭

(いしど・さとる)
記者/ノンフィクションライター。1984年生まれ、東京都出身。立命館大学卒業後、毎日新聞などを経て2018 年に独立。本誌の特集「百田尚樹現象」で2020年の「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞」を、月刊文藝春秋掲載の「『自粛警察』の正体──小市民が弾圧者に変わるとき」で2021年のPEPジャーナリズム大賞受賞。著書に『リスクと生きる、死者と生きる』(亜紀書房)、『ルポ 百田尚樹現象――愛国ポピュリズムの現在地』(小学館)、『ニュースの未来』 (光文社新書)など

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