- HOME
- コラム
- 本好きに捧げる ホメない書評
- 『わかりやすさの罪』から抜け落ちている「わかりやす…
『わかりやすさの罪』から抜け落ちている「わかりやすさ」との戦い方
取材をすることで相手に情が移ってしまい、筆が鈍るので取材を控えるという人もいる。小説家やコラムニストならそれも許されるだろう。だが、私には「情が移る自分の弱さ」を感じるためにも取材が必要なのだ、という当たり前の話にしかならない。
本書を読んで思う。視る力を鍛え、文章に力を与える取材はあまりにもコストがかかり非効率的だ、と。苦労する取材をせずに、ある立場から読者にカタルシスを与える文章や評論を書き続け、しかも売れるのならば、そちらの道は「わかりやすく」効率的だ。私が頭を抱えてしまうのは、「わかりにくい」現場や人間を知るためには無駄な労力をかけなければならない、という価値観を持っていることに理由がありそうだ。
<本誌2020年9月1日号掲載>
【関連記事】ケント・ギルバート新著『プロパガンダの見破り方』はそれ自体が「陰謀論」
【関連記事】話題書『ネットは社会を分断しない』は、単なる「逆張り」本なのか?
9月29日号(9月23日発売)は「コロナで世界に貢献した グッドカンパニー50」特集。利益も上げる世界と日本の「良き企業」50社[PLUS]進撃のBTS
この筆者のコラム
「敵をぶった斬る」式極論の深すぎる罪 2022.07.30
ノーベル賞受賞者が言ったから、イベルメクチンを「盲信」していいのか? 2022.06.14
オリバー・ストーンの甘すぎるプーチンインタビューと、その重すぎる代償 2022.05.23
元駐ウクライナ大使、大いに陰謀論を語る 2022.04.12
自画自賛する「コロナの女王」本にサイエンスはあるか? 2022.03.17
「派閥愛」を語りたがる岸田首相にビジョンはあるか 2022.02.15
サッカー日本代表の森保監督に刺さる8年前の「ブーメラン」 2022.01.18