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国家内の分断「ハイブリッドな内戦」が始まる......すでに極右は主流になったのか?
ヨーロッパに極右はいない
不可視化された人々が多数派だという認識は、これまで自らを多数派と考えてきた人々にも広まっている。11月27日のタイムズの記事は、「極右」という呼び方に異を唱えた。なぜなら、ヨーロッパの主流はもはや彼らなのだから、「極」という言葉は当てはまらないというのだ。
正直、個人的にはそうでないと思いたいが、多くの国の選挙の結果はその可能性が高いことを示している。それでもかつての主流派の多くは、まだ自分たちを主流派だと考えているだろう。なぜなら、社会の多くの側面はまだ彼らを中心に動いているからだ。政治は交代が始まり変化が可視化されたが、文化ではまだそうなっていない。しかし、「Rich Men North Of Richmond」や「サウンド・オブ・フリーダム」のヒットは、文化面でも主役の交代が始まったことを告げている。
調査結果が示した反主流派の実態
極右、陰謀論者、白人至上主義者などを総称して「反主流派」と私は呼んでいる。多数派となってしまったので「反主流派」と呼ぶのには語弊がありそうだが、特定のイデオロギーを持たず、反エスタブリッシュメントや社会への不満で動機づけられているため「反主流派」という言葉が合うような気がする。
極右、陰謀論者、白人至上主義者などは異なるグループのように思えるが、特定のグループがその時々に合ったテーマに合わせて活動しているのが実態に近い。コロナのパンデミックの最中には反ワクチン、ウクライナ侵攻が始めればそちらについて発言する、といったぐあいだ。たとえば、2021年1月6日に、アメリカ連邦議事堂を襲った人々は、トランプ支持者であると同時に、陰謀論者だったり白人至上主義者などだった。
11月末に公開されたInstitute for Strategic Dialogue(ISD)の調査結果でこうした状況を統計的に確認できた。アイルランドのネット情報空間について包括的な調査を行ったものだが、同様の傾向は他の地域にも当てはまりそうだ。
この調査ではネット上の言説の9つの主たるテーマを特定した。陰謀、健康・衛生(特にコロナ)、移民、エスノナショナリズム、アイルランドの政治、気候変動、LGBTQ+、ロシア・ウクライナ紛争、5Gである。表をご覧いただくとわかるように複数のテーマを含んでいることが多い。健康・衛生(ほとんどはコロナ関連)についての発言で陰謀論にも言及している割合は24.49%、健康・衛生について発言している発言に他の8つのトピックスについての言及がある割合の合計は90.88%(重複があるため高めに出るのだが)となっている。
また、時期に合わせて取り上げるテーマが変わっていた。
余談であるが、この調査は12のSNSプラットフォームを対象にしていた。誤報と偽情報のエコシステムの中で最も活発な活動が行われているプラットフォームはX(かつてのツイッター)だった。
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