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日本が完全に出遅れた第三次プラットフォーム戦争
SNS、検索エンジン、電子商取引を中心とした第一次プラットフォーム戦争はアメリカ企業が世界のプラットフォームを席巻した。第二次プラットフォーム戦争ではアメリカ以外でのプラットフォーム確立の動きであり、中国企業群が頭ひとつ抜けて普及した。現在、世界はアメリカと中国という巨大プラットフォーム企業群を抱える国家=いわばプラットフォーム国家にさまざまな産業分野のインフラを握られようとしている。これに対抗する動きが第三次プラットフォーム戦争である。
プラットフォームの範囲は以前よりもはるかに拡大し、社会の基盤となった。そのためこの戦争は単にアメリカ対中国の図式では語れない。日本の企業もこのプラットフォーム戦争の結果如何によっては大きく戦略や企業活動に制限を受けることになる。たとえばネットの民主化を訴える市民団体Just Net Coalition(インドが中心となっている)の主張にはデータを本来の持ち主である利用者と利用者の属するコミュニティ(多くの場合、政府)と共有するよう求めている。これが国際的な規制となった場合、SNSはもちろん、ウーバー、宿泊シェア(Airbnb)、電子商取引、MaaS(Mobility as a Service)など国境を越えたあらゆるサービスにおいてデータを独占することができなくなる。
もし各国がこの規制を始めれば日本の企業ももちろん影響を受ける。LINEは海外の利用者データを利用者本人と相手国政府(当該国の利用者の分だけ)に提供しなければならなくなるし、楽天も他国で展開しているサービスのデータをその国の利用者本人と政府に提供することになる。コネクテッドカーのデータも同様だ。
また、プラットフォームに対する法規制が厳しくなることは間違いない。これまで法規制が追いついていなかった部分に本来あるべき規制が設けられる。規制内容によって、有利になる国家や企業は異なる。第三次プラットフォーム戦争はあらゆる分野のプラットフォームの社会基盤としての位置づけを定め、有利な立場を確保するための国家と企業の戦いなのである。
アメリカ対中国という図式は安全保障や経済などあらゆる分野で見られる。プラットフォームでも同様だ。しかし、アメリカ対中国のどちらかの陣営に属するとしても、属国になるわけではなく独自の立ち位置と主張を維持するための戦略を持つのは当然のことだ。第三次プラットフォーム戦争は、二大プラットフォーム大国のどちらかに属しながらも、自国の権益を守るための戦いとも言える。
たとえばEUはGDPRなど法制度を整えて、巨大プラットフォームの活動に制約を与えはじめている。グローバル・サウスには前述の動きがある。後掲の年表を見ていただくとわかるが、世界の主要国はプラットフォーム覇権をめぐってさまざまな動きをしている。
もちろん、日本も本来なら第三次プラットフォーム戦争の中心となるべき国のひとつである。しかし、残念ながら日本は2019年1月世界経済フォーラム(ダボス会議と言った方がわかりやすいかもしれない)で当時の首相であった安倍晋三が信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)を提唱し、これをキーワードとした第四次産業革命を経産省が進めているくらいしか見るべきものがない。しかも世界経済フォーラムの資料を見る限りでは、他国に取って代わられることのない日本の権益につながりそうなものは見当たらない。
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