コラム

日本でワクチンにまつわるツイートはどう広がったのか 215アカウントが影響を与えていた

2021年03月17日(水)17時30分

今回のコロナに対処している組織や報道機関の発信する情報よりも、一般人と医療クラスタが流す情報の方が圧倒的に多くリツイートされ、拡散していることになる。表中の数字を見ていただくと、一般人と医療クラスタの拡散力の大きさをわかっていただけると思う。

ichida20210317e.jpg

拡散を時系列で確認するために1時間ごとにツイート数の推移をまとめたものが下図になる。ツイート全体と、全体の50%を占めたRTの元ツイート1,032件の投稿数の推移はほぼ一致していた。

ichida20210317f.jpg

これを24時間ごとのグラフにしてみると、毎日似たパターンを繰り返していたことがわかる。24時間中に3回のピークがある。ピーク時間は朝の8時から10時、昼の12時から14時、そして夜の22時から23時である。この時間帯が比較的ツイートしやすい時間帯であることと、テレビのワイドショーやニュース番組などで新しい情報に触れることも要因かもしれない。

ichida20210317g.jpg

また、ツイート投稿後 の1,2時間が最も多くリツイートされ、3時間をすぎると急速に減少している。前の結果と合わせると、朝の8時から10時、昼の12時から14時、夜の22時から23時のいずれかに投稿されたツイートが1,2時間のうちに急速に拡散したことになる。

ichida20210317h.jpg

広く拡散した1,032件のツイートも同様の傾向だが、拡散しなかったツイートと異なるのはリツイートしたアカウントのフォロワー数である。広く拡散するツイートでは、リツイートしたアカウントのフォロワー数が拡散しなかったツイートに比べると多い。

なお、拡散と元ツイートのフォロワーの数にははっきりした相関は見られなかった。リツイートしたアカウントのフォロワー数の影響の方が大きい。

ichida20210317i.jpg

ichida20210317k.jpg

以上のことを総合すると、ワクチンに関するツイートは朝の8時から10時、昼の12時から14時、夜の22時から23時に投稿されたものが2時間以内にフォロワー数の多いアカウントにリツイートされることで拡散することが多いことがわかる。リツイートするにあたり、信頼度、知名度、ツイートの内容よりも、タイムラインに自動的に流れてくる自分にとって利便性の高いツイートを選んでいる。これは日米の過去の調査で明らかになった、ニュース取得にあたり情報の信頼性よりも利便性(アクセスの容易さ)を優先する傾向と一致する(過去記事)。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ロのキーウ攻撃を非難 「ウラジミール、

ビジネス

米3月耐久財受注9.2%増、予想上回る 民間航空機

ビジネス

米関税措置、独経済にも重大リスク=独連銀総裁

ワールド

米・ウクライナ鉱物資源協定、週内に合意ない見通し=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 2
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考えるのはなぜか
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 5
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    謎に包まれた7世紀の古戦場...正確な場所を突き止め…
  • 8
    「地球外生命体の最強証拠」? 惑星K2-18bで発見「生…
  • 9
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story