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インドの監視管理システム強化は侮れない 日本との関係は......
インドの国民管理システム、Aadhaar
Aadhaar(アダハー)はインドの国民IDシステムである。日本のマイナンバーみたいなものと考えていただいてよいだろう。ただし、さまざまなデータがそこに紐付けられている。
2009年に始まったこのシステムは12億人以上の生体データを持つ世界最大の生体認証システムだ。しかもこの生体認証は、顔、両目の虹彩、両手全指の指紋を登録した高精度マルチモーダル認証となっている。これを提供しているのが日本のNECである(2019年9月)。
前掲のcomparitech社の評価項目の「IDと生体認証」でインドが中国についで世界ワースト2となっているのもうなずける。ちなみにこの指標は1から5までになっており、1が最低である。全ての国の中で中国とインドのみが2未満となっている。
FOREIGNE AFFAIRSの記事(2020年2月19日)によれば、Aadhaarは納税や福祉給付金の受け取りに必須になっており、銀行取引や携帯電話番号なども含めようとしたものの最高裁によって阻まれた。
運用において特定の州の有権者の投票権を取り上げたり、個人を特定して権利を剥奪することもデータベースを操作するだけで可能となっている。Aadhaarデータベースを民間企業が利用することが許可されていることも深刻な問題だ。インド政府はAadhaarを利用した監視強化を進めようとしており、国民の権利を脅かしているとしている。
さらに2020年3月17日のHUFFPOSTは、より緻密でリアルタイムで更新される監視システムの導入が検討されていることを暴露した。同記事によれば、移動、転職、不動産購入、家族の増減、結婚などの情報がリアルタイムで更新され、最終的に宗教、カースト、収入、財産、教育、婚姻、雇用、障害、家系図データなど全てを統合したシステムにしようとしていた。さらに各戸にジオタグをつけ、インド宇宙研究機関(ISRO)のシステムと統合することも考えている。
最終形のAadhaarが実現すれば全国民の個人情報はリアルタイムで政府および民間企業の手にわたることになる。そして担当者がクリックするだけで、ステータスを変更し、権利を取り上げ、市民として活動できなくすることも可能だ。そしてネット世論操作が当たり前に行われている国である以上、与党あるいは為政者がその立場を堅牢なものにするための悪用を行う可能性は低くない。さらにベネズエラのように政府を支持する言動をSNSで行ったものに報奨金を支払う制度まで備えれば、より強固なものとなる(ハーバービジネスオンライン、2019年10月21日)。
インドで進む監視強化
インドでは監視カメラや顔認証システムを用いた監視が進みつつある。インド北部のウッタルプラデーシュ州で暴動が発生した際、1,100人以上が逮捕されたが、その特定には25台のコンピュータによる顔認証システムの力があった(The Atlantic Council、2020年2月10日)。インドでの抗議活動では顔認証を避けるため顔を隠すようになっているという。
とはいえインドの監視カメラの設置台数は100人に対して0.9台(ニューデリー)とまだ低い水準である。中国上海の11.3台/100人に比べると、大きな開きがある。しかし、急速に拡充している。インドの認証システムの市場は2018年の段階で7億ドルだったが、2024年には40億ドルに達すると予測されている(ロイター、2020年2月17日)。
インド国内の企業も力をつけてきている。インドのスタートアップ企業 Innefu Lab社の開発したAI Visionは、顔認証に留まらず、歩き方や動作も認証できる。警官に意思を投げている人物のみをピックアップして特定できる。AI Visionはインドの10の州に導入されている。同じくスタートアップのStaqu社は、前述のウッタルプラデーシュ州を含む8つの州にPolice Artificial Intelligence Systemを提供している。
2019年後半、インド内務省のNational Crime Records Bureau (NCRB)は世界最大級の大規模な監視システムの導入を発表した(Deutsche Welle、2019年7月11日)。インドでは国民10万人あたりの警官の数が144人と世界最低水準であり、犯罪捜査に支障をきたしている。このシステムによって警官不足に対応する。データは全土で共有する予定となっていた。このデータベースは監視カメラの映像に留まらず、SNSの投稿や新聞記事など一般公開されている画像、パスポート、犯罪記録などとも連携する。
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