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中国が一帯一路で進める軍事、経済、文化、すべてを統合的に利用する戦い
一帯一路の軍事展開は、港湾と道路の確保だけでなく、中国版GPSと急拡大する中国の民間軍事会社も...... REUTERS/Tingshu Wang
<中国が一帯一路で行っているのは軍事、経済、文化などすべてを統合的に利用する「超限戦」と呼ばれる戦いなのか。今回は、民間企業、社会信用システム、軍事について考えたい......>
これまで中国の一帯一路のサイバー空間、教育について見てきた。今回は民間企業、社会信用システム、軍事についてご紹介したい。
中国政府と民間企業との連携は密接
中国において大手民間企業の多くは中国政府の強い影響下にある。主要企業は中国人民政治協商会議のメンバーであり、中国企業と国民は国家情報法の規定により政府の要請に応じて情報を提供する義務を負っている。さらに近年の中国政府は民間企業の経営に介入しているという観測もある(EPOCH TIMES、2019年9月29日)。
一帯一路においては中国およびアジアインフラ投資銀行(AIIB)が相手国に投資するとそれを中国企業が受託してインフラなどの開発を行っている。
また中国の大手IT企業アリババの創業者ジャック・マーはアフリカの企業家育成に乗り出すなどの動きを見せている(Financial Times、2019年12月5日)。余談だが、ジャック・マー自身がその経緯についてNew York Timesに寄稿している(2019年12月5日)。
中国政府と民間企業との連携は密接であり、あらゆる分野にわたっている。後述する社会信用システムや軍事においても同様である。
中国の社会信用システムは一帯一路参加国に広がろうとしている
社会信用システムとは、個人や団体の信用度を評価し社会で共有、利用するためのシステムである。企業や個人の資産の状態、ビジネス、法規制の遵守、トラブルの有無などを総合的に尺度化したものが、いわゆる「信用」となる。たとえばムーディーズやS&Pなどの格付け機関は金融商品などの信用を格付けという形で開示する。日本では全国銀行個人信用情報センターが消費者金融に関わる個人信用、シー・アイ・シーはクレジットカードに関わる個人信用を開示している。民間レベルだとAmazonや楽天の出店者の評価などもその一種と言える。
中国の社会信用システムは国内向けに運用されていたもので、大きく政府、地方自治体、民間企業の3つに分かれる。政府内各部局、地方自治体と民間企業は個々に異なる社会信用システムを構築しており、機能や用途は異なる。近年、共通のAPIが用意され、相互接続されるようになってきている。
日本でよく紹介される芝麻信用は民間企業が運用する社会信用システムのひとつでアリババグループが提供している。WeChatを提供するテンセントの騰訊征信と呼ばれる社会信用システムも多く使われている(ハーバービジネスオンライン、2020年05月14日)。
全体をまとめた表が下記になる。
中国の社会信用システム
中国の社会信用システムは一帯一路参加国にも広がろうとしている。2018年10月に山東省済南で開かれたイベントで、一帯一路参加国の間で社会信用情報を共有するプラットフォーム「"一带一路"国际合作城市信用联盟」の設立が告知された。参加国は、中国、フランス、イタリア、サウジアラビア、モンゴル、タイ、ミャンマーの7カ国だ。
2020年には中央アジアのカザフスタン、キルギスタン、モンゴルで社会信用システム導入のためのフィージビリティースタディーを行うことになっている。
社会信用システム、監視システムが完備すると監視カメラの映像から顔認証して詳細な個人情報まですぐにたどることができるようになる。デモや反政府活動に参加すれば、すぐに身元がわかる。一帯一路で社会信用システムが共有されることになれば、国境を越えて追跡することも可能だ。中国はこれらを一帯一路参加国に提供することによって、相手国の政権を盤石なものにできる。デジタル権威主義の輸出と呼ばれるゆえんである。
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