アングル:広がる米国「援助停止」の影響、中国や日韓に肩代わりできるか

3月18日、中国はアジアでの重要な対外援助国として米国に取って代わるのに最も適した立場にあるものの、完全に置き換わることには消極的かもしれない。写真は2月、ワシントンのUSAID本部前で解体に抗議する人々(2025年 ロイター/Kent Nishimura)
Mariejo Ramos
[マニラ 18日 トムソン・ロイター財団] - 中国はアジアでの重要な対外援助国として米国に取って代わるのに最も適した立場にあるものの、完全に置き換わることには消極的かもしれない。一方、アジアの経済大国である韓国と日本も十分な対外援助国にはならないかもしれない。
トランプ米大統領が対外援助を一時停止し、対外援助事業を担ってきた国際開発局(USAID)の解体に動いたことを受け、極めて重要な妊婦向けの医療から災害支援に至るまでのアジアでの救命プロジェクトの存続が危ぶまれている。
中国は世界2位の経済大国だが、対外援助の手法は米国とは大きく異なっている。中国は主として返済が必要な融資を実施し、インフラプロジェクトに重点を置いていると専門家らは指摘する。
オーストラリアのシンクタンク、アジア太平洋開発・防衛会議のエグゼクティブディレクター、メリッサ・コンリー・タイラー氏は「中国は、民主主義の促進やメディアの自由、市民社会、LGBT(性的少数者)、女性の権利といった分野でギャップを埋めるために行動する可能性は極めて低い」とし、「これらの重要な分野を米国の対外援助削減の犠牲にさせないことが他の援助国にとって極めて重要だ」と強調する。
米国は2024年に世界で総額560億ドルの対外援助を実施したが、うち324億8000万ドルはUSAIDを通じて実行されていたことが米政府のデータで示されている。
このデータによると、24年の米国の対外援助のうち約70億ドルが南・中央・東アジアとオセアニアに供与された。
中国は対外援助のデータを閲覧可能な状態で提供していない。ただ、ローウィー研究所の23年の報告書は中国が15―21年に東南アジアに対して年間約55億ドルの政府開発資金を支出し、うち4分の3はインフラ整備に使われたと指摘している。
もっとも、中国の資金提供の大部分は非譲許型の融資として実施されている。
ローウィー研究所のインド太平洋開発センターのアレクサンドル・ダヤント副所長は、米国の対外援助からの撤退は「(中国にとって)世界開発での役割を再定義する機会になる」としながらも、中国がその役割を果たすとは予想していないと話す。
ダヤント氏は「中国は歴史的に見てインフラ融資に重点を置いてきた。米国が資金を援助してきた民主主義や保健、教育にも踏み込むと思ってはならない」とくぎを刺した。
<地域での影響力>
専門家らは韓国と日本も支援に乗り出す可能性があるものの、そのためには両国が援助予算を大幅に増やす必要があると指摘する。
経済協力開発機構(OECD)によると、かつて外国からの援助を受けていた韓国は2024年の政府開発援助(ODA)予算が48億ドルと過去最高になり、30年までに2倍超へ引き上げることを目指している。
シンクタンクの世界開発センター(CGD)のイアン・ミッチェル上級政策研究員は「韓国はここ数年、援助提供国としての取り組みを強化しており、歳入水準を踏まえるとさらに増額することも可能なはずだ」との見方を示す。
一方でOECDのデータによると、韓国と日本の23年の援助予算は計220億ドル超と、米国が同年に対外援助に費やした800億ドルの3分の1未満にとどまる。
ミッチェル氏は「米国の援助に取って代わるには大幅な増額が必要となる」とし、日本の援助活動は既にアジア太平洋地域に集中していると指摘した。
中国の優先事項は米国とは異なるものの、中国がこの地域で影響力を高める機会を見逃すことはないだろうとの見方もある。
外交問題評議会のシニアフェロー、ジョシュア・カーランツィック氏は「中国はこれまでは他国のさまざまな種類のプロジェクトを支援するための融資が大部分を占めていたが、アジア全域で補助金を劇的に増やすだろう。中国にとってはこの地域でのアメリカの影響力をさらに低下させる明らかなチャンスとなる」と語った。
ミッチェル氏は、中国が新たな地平を切り開こうとしている兆候が既にいくつかあるとして「中国は昨年、初めてとなる気候変動資金を提供した。このことは開発援助の資金提供国とみなされることをより受け入れようとしている兆候かもしれない」との見解を示した。