国境近くのミャンマー詐欺拠点に依然最大10万人=タイ警察

数週間にわたる取り締まりにもかかわらず、タイとの国境近くにあるミャンマーの詐欺拠点は今も運営されており、最大10万人が残されていることが18日分かった。写真はミャンマーのミャワディにある詐欺拠点で2月に撮影(2025年 ロイター/Stringer)
Panu Wongcha-um Panarat Thepgumpanat
[18日 ロイター] - 数週間にわたる取り締まりにもかかわらず、タイとの国境近くにあるミャンマーの詐欺拠点は今も運営されており、最大10万人が残されていることが分かった。捜査を指揮するタイ警察の人身売買対策センター長のタッチャイ氏がロイターのインタビューで明らかにした。
国連によると、詐欺拠点を解体するための地域的な取り組みでタイは先頭に立っている。この詐欺拠点は、毎年数十億ドルをだまし取っている東南アジアの違法施設の一部で、多くの場合は犯罪組織に監禁された人たちが詐欺行為に加担させられている。
ミャンマーのミャワディ地区にある広大な詐欺拠点に対する2月以降の大規模摘発により、タイ警察によると中国人やインド人など計5200人超が救出され、うち3500人超がタイ経由で母国に送還された。
タッチャイ氏はタイ当局が実施した20カ国の計約260人への初期調査で、大部分は自主的にミャワディへ行ったと答えたと明らかにした。その上で、働かされていた十カ国を超える人々への調査を慎重に進める方針を示した。
「多くの人たちがミャワディで仕事を見つけるための経路としてタイを利用しており、コールセンターを使った詐欺だけではなく、オンラインギャンブルや他の行為にも携わっている」と説明した。
この発言は、ミャワディおよび近郊で働く詐欺拠点の従業員が犯罪組織の指導者に監禁された被害者だとする広範な報告とは相反する。
この地域の詐欺拠点の専門家である米国平和研究所のアナリスト、ジェイソン・タワー氏はミャワディなどの地域に進んで足を運んだ多くの人々が、詐欺行為のためにわなにはめられたとして「多くは率先して向かっても、人身売買されたことを後で知ることになる」と指摘した。
このような詐欺拠点は何年間も運営されてきたが、1月にタイで中国人俳優の王星さんが誘拐され、ミャワディから救出された事件を受けて注目が集まった。
この誘拐事件は中国のソーシャルメディア(SNS)で騒ぎとなり、中国政府は当局者をタイに派遣して、ミヤワディなどの詐欺拠点を壊滅して多くの国民を救出する作戦の実行に向けて調整した。詐欺拠点で働いていた中国人の多くは帰国した。
<多国間の協力>
タッチャイ氏はタイと中国が集めた情報に基づき、詐欺拠点は「依然として運営されており、最大で5万人または10万人が残っている可能性がある」と説明。少なくとも3700人の犯罪者がこの地域で活動を続けていることが確認されている。タイは一帯への送電とインターネット利用、燃料供給を停止している。
タッチャイ氏は、詐欺行為に関与した犯罪者を送還、調査して起訴するための情報を共有する多国間の調整拠点を設立するように働きかけていると述べた。
一方、タイとミャンマーの国境では働かされていた数千人がいまだに身動きがとれず、中には十分な資金がないため帰国できない人もいるという。