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情報BOX:ロシアとウクライナのエネルギーインフラの現状、停戦交渉で焦点に

2025年03月18日(火)18時01分

 トランプ米大統領はロシアのプーチン大統領と3月18日にウクライナ戦争の終結に向けた協議を行い、交渉では「土地」と「発電所」が譲歩の対象になると示唆したが、詳細には触れなかった。写真はウクライナのザポロジエ原発。2023年6月撮影(2025年 ロイター/Alina Smutko)

[ロンドン 17日 ロイター] - トランプ米大統領はロシアのプーチン大統領と18日にウクライナ戦争の終結に向けた協議を行い、交渉では「土地」と「発電所」が譲歩の対象になると示唆したが、詳細には触れなかった。

2022年のロシアによるウクライナ侵攻以来、ウクライナのエネルギーインフラは大規模な攻撃を受け、数百万人が停電や極寒に苦しんでいる。一方、ウクライナもロシアの製油所、ポンプステーション、石油・ガス輸出港に対して長距離ドローンによる報復攻撃を行っている。

停戦協議で鍵になり得るエネルギーインフラの現状をまとめた。

◎ウクライナの発電所

欧州最大の原子力発電所であるウクライナのザポロジエ原発は1基あたり1ギガワット(GW)の発電能力を持つ原子炉を6基備えており、2022年3月初旬にロシア軍に占拠された。付近で戦闘が続いたため同9月に運転を停止したが、ウクライナ側の送電網から電力供給を受け、原子炉は維持されている。ウクライナ国営原子力企業エネルゴアトムは、設備の今の正確な状態は不明で、ロシアによる占拠が続けば深刻な事故につながりかねないと警告している。

同原発は23年に水力発電所が破壊されたためカホフカ貯水池からの水供給が絶たれ、現在は冷却プールの水を使っているが、プールの水位は低下している。技術者によると、水不足のため原子炉2基以上が稼働できなくなっている。また発電所の技術的な状態が不明で、再稼働には少なくとも1年を要するとみられる。

ウクライナは原発以外にも火力発電所(ガス・石炭)や水力発電所の発電能力を喪失しており、複数の大規模な熱電併給プラントも損傷を受けるか、完全に破壊されている。

◎ガスパイプライン

ウクライナにはシベリアで採取されたロシア産ガスを欧州の顧客に供給するために建設された、東西を結ぶ総延長約1000キロのガス輸送システムがある。このパイプラインの輸送能力は年間最大1400億立方メートルで、これは欧州のガス需要の約3分の1に相当する。

しかし同パイプラインは近年輸送量が減少。ウクライナとロシアのガス輸送契約の最終年に当たる2024年のロシア産ガスの輸送量は140億立方メートルにとどまった。ウクライナはロシアの輸出収入を断つために輸送契約の更新を見送った。ただ、パイプラインは現在もウクライナ国内のガス輸送に利用され、スロバキアやハンガリーなどがロシア産ガスの供給再開を求めている。

ロシア特殊部隊は今月、このパイプラインを使ってロシア西部クルスク州に潜入した。ウクライナ軍が2023年8月から占拠していたロシア領の一部を奪還する作戦の一環だった。

◎ガス貯蔵施設

ウクライナには欧州最大級の地下ガス貯蔵施設がある。多くは西部に集中し、総貯蔵容量は300億立方メートル余りに達する。ウクライナ政府は繰り返し欧米企業に対し、この貯蔵施設の3分の1を利用するよう提案してきた。2023年には外国企業によるウクライナのガス貯蔵施設の利用は約30億立方メートルだったが、ウクライナのインフラを標的としたロシアの攻撃が激しくなったため、2024年にはほぼゼロに落ち込んだ。

こうしたガス貯蔵施設はトランプ政権発足以来、米国産LNG(液化天然ガス)の貯蔵拠点として活用する可能性が特に注目を浴びている。

◎ロシアの石油インフラ

ウクライナによるロシアの製油所、石油貯蔵施設、工業施設へのドローン攻撃は1月以降に増加。こうした攻撃によりロシアの製油能力の最大約10%が一時的に停止した。被害は2月に集中しており、一部で深刻な影響が出たことが、トレーダーのデータに基づくロイターの推計から読み取れる。トレーダーによると、ウクライナはロシアの一部石油貯蔵施設やパイプライン、ポンプステーションを標的にしており、輸出港や製油所への供給を妨害している。

最近のウクライナによるドローン攻撃で、ロシアの主要な石油輸出ルートであるドルージュバ・パイプラインの輸送にも影響が出た。このパイプラインは今もハンガリー、スロバキア、チェコにロシア産原油を輸送している。ロシアのウスチルガ港の石油ターミナルも被害を受けた。ロシアは石油輸出インフラが損傷するとエネルギー輸出収入が減少する可能性がある。

ウクライナが2月に仕掛けたドローン攻撃では、ロシア南部の「カスピ海パイプラインコンソーシアム(CPC)」パイプラインのポンプステーションも被害を受けた。このパイプラインはカザフスタン産原油を輸送する主要ルートで、米国や欧州の企業が関与するプロジェクトを通じた輸出も行っている。

ロイター
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