米政権、中国・メキシコ・カナダへの関税措置発動 貿易紛争激化

トランプ米政権は、メキシコとカナダからの輸入品に対する25%の新たな関税と、中国に対する追加関税に10%上乗せする措置を発動した。資料写真、2月撮影(2025年 ロイター/Nathan Howard)
David Lawder Andrea Shalal
[ワシントン 4日 ロイター] - トランプ米政権は4日未明、メキシコとカナダからの輸入品に25%の新たな関税を課した。さらに中国製品への追加関税を2倍の20%に引き上げる措置を発動し、米国と主要貿易相手国3カ国との間で新たな貿易紛争に発展した。
これに先立ちトランプ大統領は、米国への合成麻薬フェンタニル流入を抑制するカナダ、メキシコ、中国の取り組みは不十分だと批判していた。
米東部時間午前0時1分(日本時間午後2時1分)に関税が発動されたことを受けて、中国政府は直ちに米国からの一部輸入品に対し、10日から10─15%の追加関税を課すと発表した。
カナダのトルドー首相も300億カナダドル(207億米ドル)相当の米国製品に対し、即時に25%の関税を課すと発表した。トランプ政権が21日以内にこの関税を撤回しなければ、追加で1250億カナダドル(862億米ドル)相当の製品に関税を課すと表明した。
トルドー氏は「今回の関税はこれまで非常に良好だった貿易関係を混乱させるものだ」と強く批判した。また、トランプ氏が最初の任期中に署名した自由貿易協定「米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」に違反すると指摘した。
加オンタリオ州のフォード首相はNBCに対し、報復措置として同州から米国へのニッケルの輸出と電力の供給を停止する用意があると語った。
メキシコ経済省はシェインバウム大統領が4日午前にメキシコ市で記者会見し、対応策を発表すると明らかにした。
<米中貿易摩擦>
トランプ氏は1期目の任期中に約3700億ドル相当の中国製品に最大25%の関税を課した。今回発表された20%の追加関税はこれに上乗せされる。
またスマートフォン、ノートパソコン、ビデオゲーム機、スマートウォッチ、スピーカー、ブルートゥース機器など、これまで追加関税の対象外だった主要家電製品にも適用される。
中国財政省は4日、米国産の鶏肉や小麦、トウモロコシ、綿花に15%の追加関税を課し、大豆や豚肉、牛肉、水産物、果物・野菜、乳製品などにも10%の追加関税を課すと発表した。
さらに中国は安全保障上の理由から米企業25社に対し輸出・投資制限を課す方針を示した。
<景気後退懸念>
北米経済は高度に統合されており、自動車や機械の製造、エネルギーの精製、農産物の加工などさまざまな産業で製品が何度も国境を越えて取引される。そのためメキシコとカナダからの輸入品に対する関税は、景気に深刻な打撃を与える恐れがある。
カナダ商工会議所のキャンディス・レイン最高経営責任者(CEO)は声明で「米政府による本日の無謀な決定は、カナダと米国をリセッション(景気後退)、失業、経済的な危機へと追い込む」と非難した。
「関税は米国民に対する税金だ」と指摘し、米国の関税はトランプ氏が望むような「黄金時代」をもたらすどころか、消費者と生産者のコストを増加させ、サプライチェーンを混乱させるだけだと主張した。
米自動車大手3社で構成する自動車政策評議会(AAPC)のマット・ブラント会長は、USMCAの要件を満たす自動車については関税から除外されるべきだと訴えた。