米資金削減でポリオ根絶遅れも、アフガンなどで野生株拡大=WHO

世界的な公衆衛生の脅威であるポリオ対策を巡り、世界保健機関(WHO)は、米国が数年間で数億ドル規模に達する可能性がある資金支援凍結を撤回しない場合、ポリオ根絶が遅れかねないとの懸念を表明した。資料写真、2024年5月(2025年 ロイター/Denis Balibouse)
[ロンドン 3日 ロイター] - 世界的な公衆衛生の脅威であるポリオ対策を巡り、世界保健機関(WHO)は、米国が数年間で数億ドル規模に達する可能性がある資金支援凍結を撤回しない場合、ポリオ根絶が遅れかねないとの懸念を表明した。
表明したのは東地中海地域ポリオ担当ディレクター、ハミド・ジャファリ氏で、管轄地域には野生株ポリオウイルスが拡大するアフガニスタンやパキスタンなどが含まれる。
トランプ大統領のWHO脱退表明で、米疾病対策センター(CDC)との協力停止など、既に影響が出ている。また、大統領の「米国第一主義(アメリカ・ファースト)」の政策のもと、国務省が対外援助事業を担う国際開発局(USAID)の助成金を全世界で90%削減したことに伴い、ユニセフ向けポリオ助成金は先週打ち切られた。
WHOは国連児童基金(ユニセフ)とゲイツ財団などと官民パートナーシップを組んでポリオ根絶に取り組む。ジャファリ氏によると、官民パートナーシップ向けに米国から今年総額1億3300万ドルの資金支援が見込まれていたが、届いていないという。
ジャファリ氏は「資金不足が続けば、ポリオ根絶が遅れる恐れがあり、より多くの子どもが麻痺の危険にさらされるかもしれない」と危機感を露わにした。その上で、ポリオの根絶に時間がかかるほど、費用は膨らむと付け加えた。
官民パートナーシップは2029年まで24億ドル不足する状況にある。昨年、ポリオ根絶までに従来の想定よりも時間と費用がかかると判断したため。