焦点:暫定予算回避へ折衷案、「赤字国債」見送りも 歳出追加に含み

2月28日、2025年度予算修正は、教育無償化を柱とする野党との折衷案で年度内成立にめどをつけ、景気に水を差しかねない暫定予算編成を回避した。写真は国会議事堂。2021年5月撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
Takaya Yamaguchi
[東京 28日 ロイター] - 2025年度予算修正は、教育無償化を柱とする野党との折衷案で年度内成立にめどをつけ、景気に水を差しかねない暫定予算編成を回避した。予算修正に伴う赤字国債の増発を見送ることで財政への配慮もみせた。ただ、今夏の参院選を控えた歳出圧力も予想され、財政平時化への道筋は依然として見えない。
<譲れない一線>
修正案提出に先立つ25日夜、自民、公明、維新の3党首が国会内で会談し、合意文書に署名すると拍手がわき起こった。
「与野党の建設的な協議や合意は、国会のあり方としても非常に意義深い」。石破茂首相(自民党総裁)がそう語ると、維新の吉村洋文共同代表は、「政党は手段であることを肝に銘じて少しでも社会を変える」と呼応した。
表沙汰にできなかったとはいえ、異例の予算修正は「年末からの懸案」(政府関係者)だった。予算案を通せなければ目玉政策への支出が滞り、政権自ら好景気に水を差す懸念もあった。
24年10月の衆院選で少数与党となった自民、公明両党には「あと十何人かいればいい。全方位外交を仕掛けていくしかないとの空気が漂っていた」と、別の関係者は振り返る。「何とかまとめ上げて欲しい」との首相の声に応じ、国民民主党や立憲民主党との協議も重ねた。
予算修正を巡り、譲れない一線となったのは「赤字国債を追加発行する事態」だったと、複数の政府・与党関係者は明かす。
衆院事務局によると、過去に数回国会による予算修正を行ったことはあるものの、一般会計総額を増やした例はない。「増額すれば内閣の予算編成権を奪うように受け止められ、財政規律に疑いの目が向けられる」ことを警戒したと、関係者の1人は語る。
<なお残るリスク>
金利ある世界での財政運営は、投資家への目配りが欠かせない。
市場には「次の参院選で経済対策が争点となることも予想され、財政出動や減税を繰り返すようだと国際社会から財政リスクプレミアム(上乗せ金利)を突きつけられかねない」(SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミスト)と懸念する声がある。
予算修正に先立ち、国際通貨基金(IMF)は「少数与党下での政治的要求を踏まえると、赤字がさらに拡大する大きなリスクがある」と警鐘を鳴らした。今のところ市場で上乗せ金利を突きつけられる状況には至っていないが、先行き不透明感は拭えない。
財務省の試算によると、金利が1%上昇すると28年度の国債費は今より3.7兆円増える。2%上昇した場合は追加負担額が7.4兆円膨らむ。
国債費はすでに予算全体の4分の1を占める。海外勢による利上げ観測などで長期金利が上昇ピッチを強める中、財政運営に疑問符が付けば、かえって政策の選択肢は狭まる。
年度内の予算成立という難局を乗り切ったとはいえ、コロナ禍以降、歳出構造の平時化で主要先進国から遅れをとる現状にどう対処するかは、依然として課題が残る。