イラン、高濃縮ウラン増加停止を提案 決議見送りが条件
11月20日、イランが保有しているウランの濃縮度について核兵器級を若干下回る水準に制限するのと引き替えに、欧米諸国が対イラン決議案の提出を見送ることを提案していたことが分かった。写真はIAEAのグロッシ事務局長。イランのテヘランで撮影、提供写真(2024 ロイター/WANA (West Asia News Agency) )
Francois Murphy
[ウィーン 19日 ロイター] - イランが、今週開かれる国際原子力機関(IAEA)理事会で欧米諸国が核開発を巡る対イラン決議案の採択を見送ることを条件に、高濃縮ウランの備蓄を増やさないと提案したが、受け入れられなかったことが、IAEAと外交関係者の話で19日、分かった。
ロイターが確認したIAEAの機密扱いの報告書の一つによると、イランは濃縮度を核兵器級の90%に接近する60%に高めたウランの備蓄を拡大しないことを提案し、その準備を進めた。
報告書によると、IAEAのグロッシ事務局長がイランを先週訪問した際に「イランが60%まで濃縮したウランの備蓄をさらに拡大しない可能性が議論」された。また、イランが「準備措置の実施を始めた」ことをIAEAが確認したという。
イランのアラグチ外相はバロ仏外相に対し、仏独英が対イラン決議案の提出を目指していることが「状況を複雑に」し、イランとIAEAの間に生じた「前向きな雰囲気」に逆行すると反発したと、イラン外務省が20日発表した。
欧米外交官らはイランの提案に関し、昨年3月にイランがIAEAとの協力を強化すると表明したものの完全に履行されなかったのと同様に、決議案を回避するための漠然とした土壇場の試みだとして受け入れを拒否した。
ある欧米の外交官は「イランは再び簡単に態度を変える可能性がある」と述べた。
<査察官>
もう一つの報告書によると、イランはIAEAの「経験豊富な査察官」4人がイランで任務に当たることを認める方向で検討することにも同意した。イランは昨年、核濃縮の専門家であるIAEA査察官の大部分の受け入れを拒否し、IAEAはイランで適切に任務に当たる上で「非常に深刻な打撃だ」と問題視していた。
外交官らは4人の査察官について、イランが受け入れを昨年拒否した査察官とは別のメンバーだとの見方を示した。
外交官らによると、英国とフランス、ドイツ、米国が支持している対イラン決議案は、IAEAへの協力が不十分だとしてイランを非難するとともに、イランの核活動に関する「包括的な報告書」を発行することをIAEAに課す内容となっている。
決議案は理事会での採択がほぼ確実。6月の前回の対イラン決議には、ロシアと中国だけが反対した。
決議案はイランに対して交渉に戻るよう圧力をかけ、核活動の新たな制限に同意させることを目指している。2015年イラン核合意は大部分の項目が破られたものの、正式に解除される「終了日」は来年10月だ。
今回のIAEA理事会は、トランプ次期米大統領の就任前で最後の四半期理事会となる。トランプ氏は1期目在任中の2018年にイラン核合意から離脱し、イランが履行義務を停止した。
トランプ氏がイランとの核協議を支持するかどうかは不透明だ。トランプ氏は、イランの宿敵で核合意に反対したイスラエルと一層緊密に連携すると公約している。