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アングル:米港湾スト終結も残る火種、労組の敵「自動化」問題は依然未解決

2024年10月04日(金)17時48分

 米港湾ストライキは10月3日に終結したものの、労働者の不安を引き起こしている自動化の導入拡大という主要問題は未解決のままとなった。バージニア州ポーツマスの港で1日撮影(2024年 ロイター/Jose Luis Gonzalez)

Doyinsola Oladipo

[ニューヨーク 4日 ロイター] - 米港湾ストライキは3日に終結したものの、労働者の不安を引き起こしている自動化の導入拡大という主要問題は未解決のままとなった。

企業は自動化が利益増につながると考えているが、労働組合は雇用減をもたらすと見なしている。自動化に抵抗する北米の港湾労働者にとって、欧州の港湾労働者を巡る協約が問題解決の糸口となるかもしれない。

米港湾労働者約4万5000人を抱える国際港湾労働者協会(ILA)と使用者団体の米海運連合(USMX)は賃上げについて暫定合意に達したと発表。3日目に突入していた米東海岸とメキシコ湾岸でのストライキを直ちに終了する。

双方は声明で、全ての未解決の問題について交渉するため、基本協約を2025年1月15日まで延長すると述べた。未解決の主要な問題には、労働者が雇用喪失につながると主張する自動化などが含まれる。

ILAのハロルド・ダゲット委員長はストライキ中にニュージャージー州エリザベスのマハー・ターミナルの外で労働者グループに対し、「われわれは自動化や半自動化と闘い続けなければならない」と訴えた。労働者は「機械は家族を養わない」、「自動化と闘い、雇用を守ろう」と書かれたプラカードを掲げていた。

労組側は、アラバマ州モービルの港における自動ゲートシステムの使用は協約違反だと主張している。

この港はUSMXの加盟社でオランダに本拠を構えるAPMターミナルズによって運営されている。ILAによると、この自動ゲートシステムは組合員を介することなく、デジタルスキャンを利用することで港に出入りするトラックを処理できるという。

海運世界大手APモラー・マースク傘下のAPMターミナルズはロイターに対し、ターミナルが08年にオープンして以来、自動ゲートは設置されており、ILA/USMXの基本協約に完全に準拠していると説明した。

USMXはこの件についてコメントを控えた。  

<カナダでの闘い>

自動化はカナダの港湾労働争議でもやり玉に挙げられている。

同国にある国際港湾倉庫労働組合(ILWU)第514支部の労働者は6月、ブリティッシュコロンビア州港湾の使用者団体BCMEAが当時最終としていた提案を拒否した。

拒否理由の一つは、物流会社がバンクーバー港の主要操車場で自動化を一方的に導入すると労組に通告したことだ。

ILWUの担当者は今月1日、「労働者が自動化に反対しているのは、雇用喪失が家族や地域社会に悪影響を及ぼすと知っているからだ」と語った。

BCMEAとILWU第514支部は、2022年11月から業界横断的な交渉を進めている。  

昨年、自動化がBCMEAとの交渉で争点となり、バンクーバーで7300人以上の労働者がストを決行。ILWUは、港湾に導入された新しい機械を修理するための労働者訓練に関する文言を協約に盛り込むよう求めた。

<欧州の協約>

欧州運輸労連の担当者によると、欧州では1993年にロッテルダムで世界初の自動コンテナターミナルが開設されて以降、港湾労組が自動化に対する保護策を交渉してきた経緯がある。

オランダ最大の港湾労組FNVヘイブンスのニーク・スタム書記は「自動化のために誰かが解雇されることはない」と語った。

同労組は世界で最も技術的に進んだ港の一つとされるロッテルダム港を含むオランダの3つの港で6000人以上の組合員を擁している。スタム氏は「われわれは長年、これ(保護策)を協約に盛り込んできた」と話す。

労組幹部はあらゆる自動化に反対しているわけではない。

ニュージャージー州のクレーンオペレーターでILAのストライキ隊長であるシャヒーム・スミス氏は「われわれの効率を向上させる技術の導入には反対しない。しかし、われわれの仕事を奪うようなものをつくろうとし始めれば問題が起きる」と述べた。

ロイター
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