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アングル:ミャンマー内戦、国軍と少数民族武装勢力が迎える「転換点」の攻防

2024年05月11日(土)08時04分

5月7日、 ミャンマー南東部のドーナ山地。密林の中で、少数民族武装勢力の戦闘員が、ミャンマー国軍が送り込んだ増援部隊を撃退しようと戦っている。写真は15日、ミャワディ近郊の拠点で、ロケット推進手榴弾(RPG)を肩に乗せて移動するKNLAの戦闘員(2024年 ロイター/Athit Perawongmetha)

[7日 ロイター] - ミャンマー南東部のドーナ山地。密林の中で、少数民族武装勢力の戦闘員が、ミャンマー国軍が送り込んだ増援部隊を撃退しようと戦っている。増援の目的は、タイとの国境地帯にある重要な貿易拠点ミャワディの奪還だ。

ミャンマーでは、2021年2月のクーデターで政権を掌握した国軍と武装勢力の衝突が3年以上続いている。最近ではミャワディをはじめとする戦略拠点を巡る攻防が激化しており、今後数週間の展開は、紛争の次の段階だけでなく軍事政権の命運を決めることになるだろう。

雨季の雲がミャンマー上空に広がる6月上旬を前に、軍事政権と武装勢力の双方にとって、支配地域の拡大や維持に向けて打てる手は限られている。アナリストらの指摘によれば、こうした天候のもとでは空軍力の優位性が損なわれ、前線で疲弊している国軍にとって特に不利に働くという。

攻防の焦点となっているのがミャワディのほか、西部ラカイン州、中国やタイとの国境沿いにある辺境地帯といった、貿易と軍事の要衝だ。

東南アジア情勢を専門とするザカリー・アブザ米国防大学教授は、そうした地域の一部では、反体制派が攻勢の継続を図る一方で、軍事政権側も雨期到来前の奪還または維持をもくろんでいる、と語る。

アブザ教授は、「国軍としては、今後数週間にわたって非常に重要な戦略的目標をいくつか抱えている」と語り、ミャワディやラカイン州の複数の街など、鍵となる現在進行中の戦闘を挙げた。

ロイターでは軍事政権の報道官に電話取材を試みたが、反応はなかった。

昨年10月以降、軍事政権側は戦場でいくつか敗北を重ね、経済への打撃と相まって、クーデター以来で最大の困難に直面している。

シンクタンクの米国平和研究所(USIP)の推計によると、軍事政権は、哨戒拠点や基地、司令部など軍事拠点5280カ所の約半数のほか、以前は国軍が統制下に置いていた少数民族地域の60%で実権を失いつつある。

ミャンマー国軍は現在、バングラデシュ、中国、インド、タイとの主要な国境地帯でさまざまな反体制グループの混成軍と戦闘を繰り広げているが、今後6カ月間でそうした地域の実権をすべて失う可能性もあるという。タイの政府当局者と外交関係者が、独自の評価に基づき、ロイターに語った。

それによると、軍事政権側は辺境地域一帯に広く薄く部隊を展開したせいで優位を失いつつあり、今後は部隊を統合し、重要な地域の優先度を上げることを模索する可能性があるという。

<不吉な前兆>

弱体化して兵力は低下しつつあるとはいえ、軍事政権側は反体制勢力に大きなダメージを与え得る火力を維持しており、国内多数派であるビルマ民族が暮らす中央低地地帯を握っている、とこの関係者は付け加えた。

バンコクを拠点とする地域政治アナリストのチチナン・ポンスディラク氏は、軍事政権側はたとえ包囲されたとしても強固な防衛線を敷き、紛争を長びかせる可能性があると指摘する。

ミャンマーの混乱について、「長期化の可能性はあると考えている」とチチナン氏は言う。ただし同氏は、長期的には軍事政権の支配は「持続不可能」だと述べ、「崩壊の兆候」として、戦場での敗北、反体制勢力の士気向上、国民の支持の欠如を指摘した。

国軍は4月にミャワディの支配権を失った後、奪還に向けた反攻をしかけた。同市を経由する貿易額は年間10億ドル(約1550億円)以上に及ぶ。

当初ミャワディから国軍を排除したのは、国内で最も古くから活動する少数民族武装勢力の1つ、カレン民族同盟(KNU)だ。現在は、軍事政権側の反攻を阻止しようと戦っている。

KNUの広報官はロイターに対し、「1000人以上の部隊がミャワディに向けて接近しているが、(KNUの軍事部門である)カレン民族解放軍(KNLA)とその同盟軍が、国軍を迎撃し、進軍を阻止して反攻を続けている」と語った。

「毎日のように激しい戦闘が展開されている」

ミャワディの西方約900キロのラカイン州では、国軍はアラカン軍との戦闘を続けている。アラカン軍がめざすのは、国軍の重要な地域拠点であるアンの掌握だ。

アンは、ミャンマーと中国を結ぶ793キロに及ぶ天然ガス輸送パイプラインの経由地でもあり、近郊には大規模なポンプ施設もある。アナリストらは、国軍は施設を管理下に維持するため全力を挙げるだろうと言う。

非政府組織「国際危機グループ」でミャンマーを担当するリチャード・ホーシー氏は、雨季に入れば軍事政権にとって重要なアドバンテージである空軍力の展開が難しくなると指摘。低く垂れ込めた雲により、空軍が通常使用している無誘導兵器に影響が出る、と説明する。

「雨季になると、ヘリコプターを使った補給や火力支援、反体制派に包囲されている基地への兵員輸送も困難かつ危険になる」とホーシー氏は言う。

前出のアブザ氏は、ミャンマー全土でここ数カ月に国軍兵士の脱走が発生しており、軍事政権が各部隊に食料や水、弾薬、医薬品の補給ができていないために士気が崩壊しつつあることがうかがわれる、と語る。

アナリストらは、雨季の到来はいくつかの大きな勝利に勢いづいている反体制勢力に優位をもたらすだろうが、こちらもさまざまな少数民族武装勢力と草の根の反体制グループの寄り合い所帯で、最低限の連携すらできていない、と指摘する。

USIPのイエ・ミョー・ヘイン氏は最近の報告書の中で、「数多くのグループのあいだで戦略的な調整を進めるには時間がかかるが、それがミャンマー内戦の今後を決定づけるだろう」と指摘した。

ミャンマー民主派による「挙国一致政府(NUG)」のチョー・ザウ報道官は、すでに軍事政権が統制できているのは中部地域の大都市だけだと述べた。

「そうした大都市でさえ、軍事政権の勢力は脅かされている」

(翻訳:エァクレーレン)

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