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インタビュー:円債投資は射程圏、上場・未上場株はまだ過少=農林中金・新理事長

2025年04月14日(月)18時02分

 4月14日、農林中央金庫の北林太郎理事長(写真)はロイターとのインタビューで、「金利ある世界」の到来により日本国債が運用の「射程に入っている」として、投資のタイミングを計っていることを明らかにした。都内で9日撮影(2025年 ロイター/Miho Uranaka)

Miho Uranaka Tomo Uetake Anton Bridge

[東京 14日 ロイター] - 農林中央金庫の北林太郎理事長はロイターとのインタビューで、「金利ある世界」の到来により日本国債が運用の「射程に入っている」として、投資のタイミングを計っていることを明らかにした。外債偏重の運用で巨額の損失を出した苦い経験から、円債や変動金利資産、非金利資産などへの幅広い分散投資を徹底する。現状では、上場・未上場株式への投資が少なすぎるとも指摘した。

農林中金では外国債券運用に伴う巨額損失の責任を受けてトップが交代、北林氏は4月に新たに理事長に就任した。

<円債も投資対象、金利リスクには慎重に>

農林中金の市場運用資産残高約45兆円のうち、北林氏によると、外債の占める割合を従来の5─6割から一段と低下させていく。投資先の配分比率はあらかじめ定めない考えで、「金融機関としての規制など制約がある中、既存ポートフォリオの入れ替えをしながらなので、特定の数値を置くよりも状況に応じてやっていきたい」と述べた。

そうした中で、外債に代わる投資先としては円債を前向きにみている。昨年9月末時点では、農林中金が保有する債券の内訳は外債が全体の7割強、国内債が3割弱だった。

北林氏は「日本国債はマイナス金利・低金利の時はなかなか投資対象になり得なかったが、一定程度の金利が出てきた中で、投資対象の一つとしては当然カウントできる」と話す。為替ヘッジコストが高止まりしていることも、その考えを後押しする要因という。

一方で「採算性が上がったから円債ばかりに投資しようとなると(過去の失敗を)また繰り返すことになる」と述べ、金利リスクの取り方は慎重にあるべきとの考えを強調した。

北林氏は、裏付け資産からの収益が変動金利で支払われる証券化商品を増やす方針も示した。固定金利資産で大きな損失を被った教訓から、変動金利資産の割合を意識的に高めていく必要があると判断したためという。

今年に入って海外金利が上昇した局面では「金利資産と反対方向に動く資産の保有が少なかった」とも振り返り、上場・未上場株式などへの投資も増やす意向も示した。

<運用は短期的な機会に「一喜一憂せず」>

農林中金では従来、米欧の国債を中心とした外債投資を軸に運用を行ってきたが、米連邦準備理事会(FRB)の利上げなどに伴い海外金利の上昇や為替ヘッジコストの高騰により収益性が悪化。2025年3月期に1兆9000億円の最終赤字を計上する見通しとなっている。

このため、低利回り資産の売却を進めて損失を顕在化させる一方、外債に偏り過ぎた金利リスク資産を減らして非金利リスク資産を増やす方針に転換しており、26年度3月期については300─700億円の最終黒字化を見込んでいる。

北林氏は「昨年度に相当低利回り資産の売却を進めてネガティブ要素が減っているので、今期の黒字に向けては(米関税政策などを受け)混乱する中で慌てて投資をする環境にはない」とみている。米国の関税政策により増した不確実性を見極めた上で、商品や時間軸や地域をそれぞれ分散しながら運用を行う方針を示し、短期的な「買い場・売り場に一喜一憂せず」に中長期の視点から運用ポートフォリオの改善に取り組んでいくと語った。

農林中金では、外債の運用失敗で巨額損失を計上した責任を取る形で奥和登前理事長が3月末で退任。財務の立て直しに取り組んできた北林氏が、外債の整理と資本の増強が終わった節目でバトンを受け取った。役員体制の大幅な若返りも推進し、再起を図る。

※インタビューは9日に実施しました。

ロイター
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