米投資適格債の新規発行が停止、相互関税発動で景気後退懸念

トランプ米大統領が4月2日、貿易相手国に対する相互関税措置を発表したことを受け、投資適格の米社債の新規発行が突然止まった。3月11日、ウォール街で撮影(2025年 ロイター/Shannon Stapleton)
[4日 ロイター] - トランプ米大統領が2日、貿易相手国に対する相互関税措置を発表したことを受け、投資適格の米社債の新規発行が突然止まった。投資適格債であっても発行条件の設定が一切見送られたためだ。投資銀行関係者によると、1カ月前から神経質な投資家らが発行条件の設定過程で難色を示し、市場では緊張が浮き彫りになっていた。
社債シンジケート業務を担当する銀行担当者らによれば、企業が希望通りの条件で発行するのに苦労するのは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以降では初めてだ。
一部のケースでは、新規の投資適格債券のブックビルディング(投資家の需要調査)の過程で、発行条件の設定が最終的に予想よりも悪かったことから、投資家が一部の債券の注文を異例にも数百万ドル取り下げた。投資家が途中で意見を変える比率が通常よりも高く、投資銀行員らには驚きの事態だったという。
モルガン・スタンレーのグローバル債券資本市場部門共同責任者、テディ・ホジソン氏は「投資家は、わずか1─2ベーシスポイント(bp)でも自分たちの希望よりも発行条件が厳しければ、案件から手を引く場合がある」と話した。
投資適格債の発行市場で投資家が企業側の希望条件を受け入れようとしないことは、トランプ大統領が仕掛ける貿易戦争が、過去数週間の市場にどのような影響を及ぼしているのかを示している。貿易戦争が長引けば経済成長が鈍化し、社債の足を引っ張ると予想されるためだ。
相互関税措置が発表された2日、米国債の流通利回りは急低下し、社債とのスプレッド(利回り格差)は拡大した。
BMOのストラテジスト、ダニエル・クリーター氏の投資家向けメモによると、ICE BAML投資適格指数のスプレッドは3日に10bp拡大し、2023年に米地方銀行で相次いで経営危機が起きて以来、最大の上昇幅となった。
モルガン・スタンレーのホジソン氏は、市場では通常、新規発行社債の85―90%が債券市場全体を上回るパフォーマンスを示す傾向があるが、現在では、その割合は30―40%程度にとどまっていると話した。景気後退が懸念され、利回りスプレッドが拡大しているためだという。
ソシエテ・ジェネラルCIBの米国債券シンジケート責任者は、企業が既に不確実性を最小限に抑えるために戦略を変えつつあると話した。「債券発行の頻度が低い企業の中には、新規発行を発表する前に事前の関心を集める目的で、投資家マーケティングを始めているところもある」と語った。