米大統領のEV目標撤回、重要鉱物やレアメタルの長期的需要に影響せず
2030年までに米国で販売される新車の半分を電気自動車(EV)にするバイデン前大統領の大統領令をトランプ米大統領が撤回したことで、リチウムなどの重要鉱物の需要が一時的に鈍る可能性がある。写真は、EV用リチウムイオン電池。2024年10月、パリで撮影(2025年 ロイター/Benoit Tessier)
Melanie Burton Ernest Scheyder
[21日 ロイター] - 2030年までに米国で販売される新車の半分を電気自動車(EV)にするバイデン前大統領の大統領令をトランプ米大統領が撤回したことで、リチウムなどの重要鉱物の需要が一時的に鈍る可能性がある。ただ、アナリストや業界のリーダーらはEV需要が世界で急増している中で、重要鉱物やレアメタル(希少金属)のより長期的な需要に支障を来す可能性は低いとの見方を示した。
撤回を受けて日本の自動車メーカーや韓国の電池メーカー、オーストラリアと米国、中国のリチウム鉱山を抱える資源企業の株価は下落した。しかし、世界2位の自動車市場となっている米国でEV需要が冷え込んでも、他の地域ではそれを補って余りある需要があると予想されている。
トランプ氏は、EVと充電拠点への支援を打ち切るために他の規制変更も計画している。また、中国からの自動車やバッテリー材料の輸入を阻止する措置の強化も目指している。
オーストラリアの投資銀行、バレンジョイのアナリスト、グリン・ローコック氏は「補助金や恩恵が撤回されるたびに、需要シナリオはへこむ」としつつ、「最終的にはトランプ政権下で少し減速しても、需要はまだ伸びるだろう」との見方を示した。
オーストラリアのリチウムメーカー、ライオンタウン・リソーシズのアントニーノ・オッタビアーノ最高経営責任者(CEO)は21日のアナリスト向けの電話会議で、米国の有無にかかわらず世界的なEVへの移行が進んでいるとして「長期的には需要に問題があるとは思わない」と語った。
ライオンタウンはEV関連市場の成長をけん引しているのは中国で、年間販売台数は1100万台規模に達していると言及。また、世界の他の地域ではEVの年間販売台数が約130万台あり、前年比27%の成長を示していると指摘した。
一方、リオ・ティントのスタウショーン最高経営責任者(CEO)は21日に世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)で「リチウムの需要は今後15年間でおそらくさらに5倍になると考えられるため、より多くのリチウムプロジェクトを立ち上げる必要がある」とし、EVは内燃機関で走る車よりも「優れた車だ」と訴えた。
電池リサイクル企業、サーバ・ソリューションズのデビッド・クラネッキーCEOはEVだけではなく、無数の電子機器の需要によって2030年までに米国の重要鉱物需要が急増すると予想する。
鉱業関係者は、欧米メーカーが中国からの供給を切り離す措置もレアメタルの需要を下支えするとの見解を示す。
オーストラリアのレアアース開発会社、アラフラのダリル・カズボCEOは「中国からのサプライチェーン(供給網)の独立性を構築するために取られる措置は、EVの販売の公式な目標撤回よりはるかに大きな影響を及ぼすと期待している」と強調し、「EVは普及を促進するための目標や奨励策が不要になる転換点が迫っている」と話した。