大統領への道「勝負の100日間」ハリスの物語と夢のパワーがアメリカの命運を決める
あらゆる経験的指標から見て、バイデン政権下の米経済は過去50年間で最強だ。バイデンの在任中、GDPは成長を続け、失業率は歴史的な低水準にあり、1500万件近い新規雇用が創出された。インフレ率は9%から約3%に低下し、景気の減速も失業率の上昇もなかった。
それでも国民は、インフレは重大な危機で経済は低迷していると信じ、バイデンを批判し続けている。
経済はトランプ時代よりはるかに好調だが、世論調査ではトランプや共和党のほうが経済をうまく回せると思われている。ハリスはバイデン政権に向けられた不当だがリアルな敵意から、自らを切り離す必要がある。
白人は黒人や女性に投票しない、という懸念もある。実際、共和党はそう望んでいる。ハリスが後継に指名された数時間後には、共和党の政治家から彼女の人種と性別を侮辱する声が上がった。
ハリスの現在の地位は政府の不当な黒人優遇プログラムのおかげであり、本来は無資格で無能だ──筆者は高学歴の共和党員から、そんな言葉を何度も聞いた。
共和党の副大統領候補J・D・バンスは、ハリスには子供がいないため、アメリカに「直接的な利害関係を持たない」と発言。ハリスを含む民主党の女性を「自分の人生や自分の選択に満足していない、子なしでネコ好きの女性たち」と評した。
とはいえ、ハリスには強みがある。
59歳という若さは、81歳のバイデンや78歳で肥満体のトランプと対照的だ。バイデンが撤退を表明した直後の10時間に彼女は仕事関連の電話を100件以上かけた。ハリスの登場に民主党員は熱狂し、3日間で1億2600万ドル以上の資金が集まった。
バイデンもトランプも大嫌いな「ダブル嫌い」は有権者の4分の1に上る。ハリスにはこの層の支持を得られる可能性がある。
さらに人工妊娠中絶問題は、他のどの問題よりもプロチョイス(中絶権利擁護派)の有権者を動かせるテーマだ。
国民の3分の2が中絶の権利を支持しており、最高裁が22年にその合憲性を否定して以来、中絶権を支持する民主党が選挙で勝ち続けてきた。ハリスは中絶の権利を擁護する力強いスポークスウーマンだ。
人種と性別が強みに変わる時
ハリスを弱い候補者と見なす物語の多くは、予備選開始前に撤退した20年の大統領選に起因している。彼女は元カリフォルニア州司法長官の経歴を打ち出したが、当時は民主党内の急進派が警察予算の削減を提唱して世論の反感をあおっていたタイミングだった。
現在のハリスは、大統領経験者として刑事事件で初めて有罪となったトランプを追い詰める検事のイメージを前面に打ち出している。トランプを糾弾し、責任を追及する人物を待ち望む有権者は多い。
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