コラム

訪朝しても、金正恩と「ブロマンス」しても、プーチンの活路は開けない

2024年06月27日(木)16時14分

プーチンと付き合う「損得」を天秤にかける男

それに、今回のプーチンの行動は、中国の習近平国家主席の意向にも反する。ホワイトハウスも、ロシアと北朝鮮の条約締結は中国も歓迎しないだろうとコメントしている。この指摘が浮き彫りにしたように、ロシアがウクライナとの戦争を続ける上では中国の支援が欠かせず、ロシアは実質的に中国に従属する状態になっているのだ。

中国にとって北朝鮮は、アメリカがアジアで影響力を拡大することを防ぐ防波堤の役割を持つ。しかし、中国は同時に、北朝鮮の挑発的な行動が自国とアメリカの関係を危うくしかねないと懸念してもいる。

ロシアと北朝鮮の条約について、中国政府は正式なコメントを避けているが、非公式なメッセージは発している。中国人民大学の国際関係論の教授が北東アジア情勢について、お決まりのように日米韓を批判する一方で、この条約が対立と紛争のリスクを「大きく高めた」と指摘している。

差し当たり、プーチンは思惑どおり、砲弾を手にし、国際社会の安定を揺さぶることができる。北朝鮮の砲弾が底を突けば、両国の蜜月は熱が冷めるだろうが、ロシアと北朝鮮が20世紀の冷戦時代以来の協力関係をある程度続ければ、日米韓は防衛協力を強化せざるを得なくなる。

ただし、プーチンの「友情」が中国にもたらす恩恵より、プーチン(とウクライナ戦争)による害のほうが大きいと習近平が判断するまでのことだ。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

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