コラム

「大谷翔平の犬」コーイケルホンディエに隠された深い意味

2023年11月28日(火)13時22分

17世紀オランダ絵画の巨匠たちのメッセージ

17世紀オランダ絵画の巨匠たちは、ヨーロッパにおいてはその2000年前のホメロス以来初めて、個人の生活や願望をテーマに据えた。歌い、酒を飲み、裁縫をし、口論する家族を描いた作品には、飼い犬としてコーイケルホンディエが幾度も登場する。画家ヤン・ステーンの『親に倣って子も歌う』に描かれた犬は大谷のペットそっくりで、絵の中に大谷がいないのが不思議なくらいだ(もっとも、彼がこの家族のように享楽にふけるとは思えないが......)。

黄金期のオランダ絵画や『オデュッセイア』が現代でも心に響くのは、家族との絆が目的意識や力をもたらす様を描き出しているからでもある。飼い犬も同様だ。支えや慰めになり、傷つきやすさや愛情深さを他者に示す印になる。大谷の場合もしかり。犬をかわいがる姿は好感を与え、彼もまた私たちと同じ人間なのだと感じられる。

私の愛犬、アラスカン・マラミュートのモホークは今や年老いて、足を引きずっている。人間であるわが子2人と同じく親密で大切な存在で、深刻な危機に見舞われたときに家族を結び付ける力になってくれた。今でも毎日、知らない道を行くよう促し、私が行ってみたい場所へ連れ出してくれる。あの霧の向こうにあるものは? モホークがいるから、私は足を踏み出す。

大谷とその犬には心が和む。飼い犬は慰め、あるいは未知の領域への導き手だ。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

「ロボタクシー撤退」の米GM、運転支援技術に注力へ

ビジネス

米キャタピラー、通期売上高は微減の見通し 需要低迷

ワールド

欧州委員長、電動化や競争巡りEUの自動車業界と協議

ワールド

米高裁、21歳未満成人への銃販売禁止に違憲判断
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 10
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story