原発処理水の海洋放出問題に妙案あり...問題の本質はゴジラだ
福島第一原発の処理水を保管するタンクは「満杯」に近い KIM KYUNG-HOON–REUTERS
<2083年まで待てば、安全に処理水を海に放出できるはずだ>
問題の本質はゴジラだ。1954年公開の映画『ゴジラ』で志村喬が演じた山根恭平博士は、度重なる水爆実験が文明社会を脅かす怪物を目覚めさせたと指摘した。
日本の当局者はゴジラを何とか止めようとしたが、この怪物はあらゆるものを破壊して暴れ続けた。ゴジラ──それは原子力を操って神を演じようとした人間の傲慢に対する自然の報復だった。
2011年、ゴジラは東日本大震災の地震と津波という形で復活し、福島第一原子力発電所に甚大な被害をもたらした。その結果、少なくとも500平方キロの土壌が汚染され、約16万人が避難を余儀なくされ、福島第一原発は廃炉が決定。日本政府は337平方キロの帰還困難区域を設置した。
科学の力を過信した人間のおごりがもたらした結果から逃れるすべはない。あれから12年、日本政府と東京電力は、保管タンクにたまった原発の処理水(放射性汚染水を浄化処理した)130万トンの海洋放出を数カ月以内に開始する見通しだと表明した。
保管タンクは間もなく満杯になるが、タンクを増やすスペースはほとんどない上に、1日100トン以上の汚染水が新たに発生しているという。当局者によれば、太平洋に放出される処理水に含まれる主要な放射性同位元素トリチウムの半減期は12.3年と比較的短く、その濃度はWHO(世界保健機関)が定める安全な飲料水の基準の7分の1にすぎない。
とはいえ、福島原発事故に関する決断は簡単でも明快でもない。一般的な科学的知識では、処理水を数十年かけてゆっくり放出すれば、海と人間の健康に対するリスクを最小限に抑えられるという日本政府の主張は正しい。海洋放出された処理水はすぐに拡散され、自然界に存在する放射線レベル以下の濃度まで低下する。
だが日本政府の計画に対しては、世界中のさまざまな国や科学者、市民が強く反対し、その論拠となる分析や事実を列挙している。中国政府は日本の海洋放出計画について、全人類をリスクにさらす一方的で無責任な行為と非難。日本は海を下水代わりに使っていると糾弾した。漁業関係者は、海洋放出が行われれば科学的事実はどうあれ、誰も「汚染された」魚を買わなくなり、漁業は壊滅すると警告する。
アメリカ政府は慎重な支持を表明しているが、全米海洋研究所協会は「日本の主張を裏付ける適切で正確な科学的データが不足している」として反対の立場だ。
もっとも、ゴジラは個別の災害がもたらした結果では決してない。この大怪獣は人間が生み出した「恐怖」の産物だ。同様に、福島第一原発の処理水問題で問われているのは「事実」ではない。
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