説教くさくない中露になびく「グローバルサウス」の国々──二極化する世界
しかし今回、中国がアメリカの「戦略的パートナー」であるサウジアラビアと、半世紀近くアメリカの中東での宿敵だったイランの和平を仲介したことの意味は大きい。
アメリカはもはや、中東における戦争と平和、そして経済を形作る唯一の超大国ではなくなった。太平洋同様、中東も米中の戦略的競争の舞台になり始めている。
中国モデルは、世界の国々のおよそ半数を占める独裁的国家にとって魅力的に映る。中国は世界のほとんどの国にとって最大の貿易相手国であり、貿易協定を結ぶ際に、相手国の政治体制を問題にしない。
一方アメリカはいくつかの地域での軍事行動が長期化していて、アフガニスタンとイラクでの失敗も記憶に新しい。そして、アメリカの介入による甚だしい損害は、それがもたらした長期的な恩恵をかき消すくらい強烈な印象を残している。
アメリカが貿易協定を結ぶ際は、相手国に人権尊重などの要求を突き付ける。そうした要求は、独裁体制の支配を揺るがしかねない。そのようなアメリカの姿勢に対しては、自国のことを棚に上げているという反発もくすぶっている。
今回、サウジアラビアがそれがどの国であれ、自国に恩恵をもたらせる国の力を借り、アメリカと長年対立してきたイランが中国に頼ったのは合理的な判断と言える。
二極化が進む世界で、いわゆる「グローバルサウス」の国の多くは、あまり口うるさくない中国・ロシア陣営になびき始めているようだ。
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