コラム

ロシアが負ければ、プーチンの自国至上主義は「歴史のごみ箱行き」になる

2022年10月13日(木)16時35分

ロイド・オースティン米国防長官は4月25日、アメリカは「ロシアがウクライナに侵攻して行っているようなことができない程度まで弱体化することを望む」と語り、戦略目標を明言した。冷戦時代の「封じ込め」政策を超えて、持続的な軍事的・経済的圧力でロシア政権の本質を変えようというのだ。

ウクライナ軍がロシア軍を破り、アメリカがロシアの政権を無力化してその政治文化を変革することに成功すれば、2022年のウクライナ戦争は、2回の世界大戦に匹敵する世界史の転換点になるだろう。

1つ目のシナリオとして、このように規範的な国際秩序が勝利した場合はどうなるか。

軍事制裁と経済制裁が成功してロシアの力が弱まり、他国を攻撃できなくなったとしても、現在のアメリカの戦略目標の下では、ロシアは孤立したままだろう。西側諸国がロシアを再び一国家として受け入れるためには、ロシアの指導部と社会が帝国的、ゼロサムゲーム的、勢力圏的な世界観を自ら否定しなければならない。

つまり、プーチンとロシア社会を覆う自国至上主義は、レーニンやスターリンと共に、革命家トロツキーの言う「歴史のごみ箱行き」になるだろう。

プーチンの後を継ぐ政権がどのようなものであれ、言論の自由を守り、公平で透明な法制度を確立して、自由な選挙を定期的に行い、国境の不可侵性とロシアの近隣諸国の主権を長期的に認めなければならない。これはアメリカが常に提唱してきた立場であり、国連の理想でもある。

そして、こうした立場をプーチンや中国の習近平(シー・チンピン)国家主席、イランの最高指導者アリ・ハメネイなど世界の全ての全体主義者は、自分たちの存続に対する脅威であり、西洋の文化帝国主義であり、「他国への内政干渉」だと見なしている。

1945年以前の世界に?

プーチン政権を倒してロシアの政治的慣行や文化を変革しようというのは、第2次大戦で米英がほぼ達成したことに並ぶ、妥協のない最大限の目標だ。

ただし、国家の世界観や政治文化を変えようとすることは、しばしば傲慢な行為になる。アメリカ人はそのことを、ベトナム、イラク、アフガニスタンでの壮大な失敗から学んできたはずだ。

もっとも、歴史は1人の指導者で変わることも少なくない。ミハイル・ゴルバチョフ元大統領は旧ソ連の政治と文化に革命を起こして解放し、プーチンはゴルバチョフが成し遂げたことを元に戻してきた。ロシアが国際システムに再統合されるかどうかは、プーチンの後を誰が、どのように継ぐかに懸かっている。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

「影の船団」に偽造保険証書発行、ノルウェー金融当局

ワールド

焦点:対日「相互関税」24%、EU超えに政府困惑 

ワールド

OPECプラス8カ国、カザフの超過生産巡り協議へ 

ビジネス

米関税24%の衝撃、日本株一時1600円超安 市場
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 10
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story