「中国ウイルス」で責任逃れを図るトランプ、情報操作の一部始終
しかし、武漢の研究施設を訪れたことがあるアメリカの一流科学者たちはそろってこの疑惑を否定している。米情報機関も、中国の科学研究や生物兵器開発と新型コロナウイルスを結び付ける証拠はないと結論付けている。そもそも、情報機関が調査したのは、中国に疑念を抱いたからではない。ホワイトハウスから命令されたからだ。
つまり、ホワイトハウスとトランプ支持派は、自分たちで中国が疑わしいと言い、政府機関に調査を命じておいて、その類いの説を取り上げた報道や、調査が行われたという事実を理由に、その説に信憑性があるかのように主張している。これは情報操作の古典的なやり口だ。 CIAの定番ジョークによれば、大惨事が起きたときは、何も認めず、全てを否定し、徹底的に反論せよ、と言われる。トランプは今回初めて、CIAのアドバイスを採用したらしい。
ウイルスが中国の施設から流出したというトランプや右派メディアの主張は、全て虚偽と妄想だ。この種のデマは社会の信頼感をむしばみ人々の安全を損なう。その一方で、トランプの嘘とデマ、そして救いようのない無能ぶりによる死者は、アメリカだけでいずれ10万人を突破するだろう。
<本誌2020年5月5日/12日号掲載>
2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。
リアリストが日本被団協のノーベル平和賞受賞に思うこと 2024.10.22
戦術で勝ち戦略で負ける......「作戦大成功」のイスラエルを待つ落とし穴 2024.10.08
カマラ・ハリスの大統領選討論会「圧勝」が、もはや無意味な理由 2024.09.25
共和党バンスvs民主党ウォルズは、あまりに対照的な副大統領候補対決 2024.09.03
全面戦争を避けたいイランに、汚職疑惑を抱えるネタニヤフが「悪夢の引き金」を引く 2024.08.20
大統領への道「勝負の100日間」ハリスの物語と夢のパワーがアメリカの命運を決める 2024.08.01
追い詰められた民主党が苦しむ「バイデン降ろし」のジレンマ 2024.07.20