差別を生み出す恐怖との戦い方──トランプの「中国ウイルス」発言を読み解く
政府と情報機関は、危機を決して無駄にせず、自分たちのために利用しようとする。トランプは、新型コロナウイルス問題を中国のせいにすることで、対応に失敗して多くの命を失わせた自らの無能さへの批判をかわそうとしている。一方、中国は自国で最初に広がったウイルスをアメリカのせいにして、国際的な影響力争いでアメリカより優位に立とうとしている。
しかし、社会が他者や被害者に責任をなすり付ける状況を変えることは可能だ。客観的な事実を示しても人々の認識を変える効果は乏しいが、リーダーの言葉が人々の認識に及ぼす影響は大きい。
リーダーは、新型コロナウイルス感染症で苦しんでいる人たちや、私たちの安全を守るために奮闘している英雄たち──中国の救急救命士やアメリカの科学者、弱者に支援の手を差し伸べる日本の一般市民──など、誰もがみな同じ人間なのだというメッセージを打ち出すべきだ。
そうすれば、ウイルスへの恐怖が社会の連帯を強化する要素として働くかもしれない。人類がこの世界的な危機に打ち勝つために、それが求められている。
<本誌2020年4月21日号掲載>
2020年4月21日号(4月14日発売)は「日本人が知らない 休み方・休ませ方」特集。働き方改革は失敗だった? コロナ禍の在宅勤務が突き付ける課題。なぜ日本は休めない病なのか――。ほか「欧州封鎖解除は時期尚早」など新型コロナ関連記事も多数掲載。
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