シンクタンクにも左派、保守派、独立派があり、その影響力は絶大
一方フェデラリスト協会(1982年)のように、目指す政策を実現するために政権と緊密に連携するシンクタンクもある。彼らが掲げるのは、司法システム内に保守派の法律家を増やすこと。この連携は、保守派の支持層にアピールしたい大統領と、司法制度を右寄りに変えたい法律家たちの「政略結婚」であり、トランプに「国家の敵」扱いされた中立的なシンクタンクに対するフェデラリスト協会の勝利でもある。
ワシントンのシンクタンク通りに大邸宅を建てて、アメリカにシンクタンクを誕生させた「泥棒男爵」たちは、その後100年にわたって政策および社会や政府への理解を発展させる中核となる仕組みをつくった。アメリカのシンクタンクは世界中の専門家をその中枢に集め、数多くの有能な人材を米政府に送り込み、20世紀の基盤となる政治的、哲学的枠組みを生み出し、アメリカの宇宙開発計画を支え、インテリジェンス・コミュニティーまで生み出した。
シンクタンクは現在も引き続き、米政府とアメリカ社会に客観的な知見と政治的なアドバイスを提供し続けている。アメリカでは事実が真実の追求よりもイデオロギー実現のために利用される傾向があり(特に右派)、政治の危険な両極化が進んでいる。シンクタンクもそれを体現するように、過去数十年にわたって両極に引き裂かれてきた。
それでもシンクタンクは今後も、政府の「第4権力」に近い立場で重要な役割を果たしていく。そして理想主義とカネ、客観的な真実への信頼、イデオロギーの実利目的での利用、思想を利用した容赦ない権力追求──をアメリカ特有の形で組み合わせて進化していくだろう。
11月19日号「シンクタンク大研究」特集ではさらに、政党志向別に選んだ15の主要シンクタンクを分類し、アメリカのシンクタンクの人脈と金脈を徹底解明。左右の大物が手を組んで、近く発足させる「反戦」シンクタンクについてもレポートする。本記事は特集の1記事を一部抜粋したもの。本記事の前半はこちら。
<2019年11月19日号「世界を操る政策集団 シンクタンク大研究」特集より>
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11月19日号(11月12日発売)は「世界を操る政策集団 シンクタンク大研究」特集。政治・経済を動かすブレーンか、「頭でっかちのお飾り」か。シンクタンクの機能と実力を徹底検証し、米主要シンクタンクの人脈・金脈を明かす。地域別・分野別のシンクタンク・ランキングも。
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