シンクタンクにも左派、保守派、独立派があり、その影響力は絶大
筆者は当時、インテリジェンス・コミュニティーを統括して国家への脅威を最終的に判断する国家情報会議(NIC)に所属していた。NICは常に世界各地の第一線の専門家に話を聞き、世界中の多くのシンクタンクや大学に意見を求める。活動は公明正大に行われ、全て公開されている。政権におもねらず、客観的な見解を示す──つまり権力者に臆さず真実を告げる──ことは、インテリジェンス・コミュニティーにとって困難だが必要な役割なのだ。
しかし、ブッシュ政権は多くの歴代政権と同様、インテリジェンス・コミュニティーが提示した結論に不満を抱いていた。その結果、彼らは「NICは偏見に満ちていてリベラル過ぎる」という不満を非公式な場でぶちまけたり、世間にそうした印象を植え付けようとした。
予想どおり、こうした攻撃とともに政権からさまざまな圧力がかけられた。彼らは、NICは自身の偏見を補強するために「左派」のシンクタンクの意見ばかり聞いており、よりバランスの取れた「独立派」の機関の見解も含めて結論を出すべきだと主張した。要は、ヘリテージ財団やアメリカン・エンタープライズ研究所(1938年)のような保守系の右派シンクタンクの意見を取り入れろというのだ。
だが、そうした組織は概して「第2の波」の中で生まれており、公平さを追求するシンクタンクというより保守派の政策を擁護するための組織という色合いが強い。
政権に都合のいいシンクタンクの意見を取り入れ、あらかじめ決められた「正しい」結論を出すよう求める圧力は、まさに1970年代の「チームB」の再現だった。チェイニーやラムズフェルド、ウォルフォウィッツといった政界の保守派は、自分たちの欲しい答えを出すよう情報当局に圧力をかけてきたが、こうした行為は不誠実だ。イラクではこうした姿勢によって悲惨な戦争に突き進むという選択肢が正当化された。
最終的にはNICおよびインテリジェンス・コミュニティーは通常どおり、明白な政権擁護派を含む外部の幅広い立場の専門家から意見を集めた。その結果、怒ったブッシュ政権から無視されることになったが。
トランプに擦り寄る組織も
もっとも、状況は今のほうがはるかに深刻だ。ドナルド・トランプ大統領は、自分に同調しない情報機関(であれ誰であれ)を「ナチス」「嘘つき」「売国奴」などと糾弾する。
ワシントンのシンクタンクの対応の仕方はさまざまだ。ブルッキングス研究所のような王道の組織は、気に入らない事実を「フェイクニュース」扱いするトランプから無視されても、客観的な「真実」の解明に取り組み続けている。
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