日韓の国力は、互いを利してこそ強まる
アメリカは、社会的な例説に関して日本に教訓を垂れるような立場にはないが、全体としては少なくとも過去半世紀にわたり、一貫してレーダー照射や偵察機妨害のような国際的挑発に対する過剰にナショナリスト的な反応を抑えようとしてきた。
そして、とりわけ虐げられた集団が関わっているときには、文化的および歴史的な「プライド」の問題に関する民族主義的な主張を排除してきた。
最終的に日韓両国がナショナリズムの遠心力を乗り越えて(少なくとも今は自分のことばかり考えているアメリカに頼らずに)より親密な同盟を築くことに成功するかどうかは、今後の東アジアの国際秩序にとって重要なポイントになるだろう。
歴史の問題や各国のアイデンティティーに関わる対立がぶり返している一方で、新たな秩序の形成が始まっている。過去75年間、アジアの覇権を握ってきたアメリカは今、日本と韓国に何を望んでいるのか?
トランプが大統領でなければ、答えは「より緊密な関係」であっただろう。政治、経済、そして戦略的な予測において、TPP(環太平洋経済連携協定)のコンセプトの復活を期待することもできただろう。
中国は何を要求してくるか。口先だけでなく本当に国際社会の規範を受け入れるかもしれないが、東アジアの新秩序の形成について、より一層の影響力を要求することは確かだ。
地理的な軋轢は宿命だろうか。歴史、あるいは文化は変えられない運命なのか。日本と韓国の指導者たちは隣国であることの宿命と過去、そして感情的な民族意識を乗り越えることができるだろうか。
気まぐれで、一国主義者で孤立主義者のトランプ率いるアメリカは、単なる例外で終わるのか。それとも、トランプを支持するナショナリストや孤立主義者のおかげで、アメリカは世界のリーダーとしての役割を、この先も放棄することになるのか。
今のところ、韓国と日本、中国とアメリカで復活したナショナリスト勢力は、アメリカが第二次大戦後に創設した「対等な主権国家同士の関係」に基づく国際秩序にますます重圧を加えている。
だが日本も韓国も、この点に関しては自らの運命を自ら選ぶことができる。両国の出方は、21世紀半ばの国際秩序の形成に影響を及ぼすだろう。賢明に行動すべきだ。日韓両国の、ひいては東アジア全域の平和と繁栄が懸かっているのだから。
<本誌2019年01月29日号「特集:世界はこう見る 日韓不信」から転載>
※2019年1月29日号(1月22日発売)は「世界はこう見る:日韓不信」特集。徴用工、慰安婦、旭日旗、レーダー照射......。「互いを利してこそ日韓の国力は強まる」という元CIA諜報員の提言から、両国をよく知る在日韓国人の政治学者による分析、韓国人専門家がインタビューで語った問題解決の糸口、対立悪化に対する中国の本音まで、果てしなく争う日韓関係への「処方箋」を探る。
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