中国が仕掛ける台湾人「転向」作戦
フェイクも百回唱えれば
心理学者によると人間は、最初は自分が見聞きしたことに反対したり虚偽情報だと分かっている場合でも、繰り返し経験して慣れてくると次第に受け入れるという。
トランプはものを知らないが、1つ重要な心理学のルールを知っている。どんな意見も十分に繰り返せば、たとえ嘘でも、人々は信じ始めるのだ。慣れは、軽蔑ではなく受容と同意を助長する(レーニンも、ナチスドイツの宣伝相だったヨーゼフ・ゲッベルスも、このルールを熟知していた)。
実際、台湾の論説や文学、ビラ、報道では、政治や社会の問題について、中国政府の立場をさりげなく主張する傾向が強まっている。例えばニューヨーク・タイムズ紙によると、海軍士官候補生も学ぶ国立台湾海洋大学には、中国寄りの主張を巧妙に組み入れたパンフレットが堂々と置かれている。
台湾の有力メディアが中国寄りの姿勢を強めているのも、偶然ではない。最近も、台湾公共広播電視集団が放映した米国在台協会幹部のインタビューが、アーカイブなどから削除された。「外国勢力」が先の統一地方選の前に、国民を欺きかねない虚偽の情報を伝えていたと、警鐘を鳴らす内容だった。
今回の選挙は台湾人の意識にとって歴史的な転換点になった。70年に及び中国と対立関係を続けてきた台湾は、人々の心理と、力の相関関係と、政治的な現実について自ら中国の思惑に合わせて軌道修正しているようだ。
全ての橋は北京に通じる。それだけでなく、台湾人の考えも北京を目指し始めている。
<本誌2018年12月11日号掲載>
※12月11日号(12月4日発売)は「移民の歌」特集。日本はさらなる外国人労働者を受け入れるべきか? 受け入れ拡大をめぐって国会が紛糾するなか、日本の移民事情について取材を続け発信してきた望月優大氏がルポを寄稿。永住者、失踪者、労働者――今ここに確かに存在する「移民」たちのリアルを追った。

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