コラム

リベラルは何故こんなにも絶望しているのか~「保守」にあって「リベラル」に無いもの

2021年09月22日(水)15時13分

こういった不屈の精神が、リベラルには足らないのではないか。たった一回の政権交代(鳩山政権)の成功体験とその後の挫折を後顧して、「私たちはまちがっていた、不寛容であった」と自虐するのは早計ではないか、と言っているのだ。

事実、本稿で引用した朝日新聞の岡田憲治氏の言によると、「リベラルの正しさが必ずしも受け入れられるわけではない」と述べているが、実際に過去10年間を切り取っても、性的少数者や女性差別について、主にリベラル側から提起され続けてきた問題について、現在ではそれが大メディアのコンプライアンス基準となり、実際の番組制作や表現を動かしているではないか。まさに、マックス・ウェーバーの言う、"堅い板に力をこめてじわっじわっと穴をくり貫いていく作業"が、奏功したのが現代社会ではないのか。そういった地道な、刹那的に注目されない政治活動を「無意味」「(リベラル以外に対し)不寛容で訴求しない」と決めつけて自虐を行い、すぐに主張を修正しようとする恰好そのものが、リベラルの弱点だと言っても差し支えはない。

「昭和の日改定運動」と保守の草の根

私は永年保守界隈に居を構えてきた。保守界隈は第二次安倍政権が誕生するはるか前の段階で、"堅い板に力をこめてじわっじわっと穴をくり貫いていく作業"をずっとおこなってきた。例を挙げるとキリが無いが、例えば「昭和の日改定運動」である。昭和の日とは、昭和天皇の誕生日である4月29日の祝日を指すが、これは2007年までの話で、それ以前は単に「みどりの日」と呼ばれていた。

これに強硬な保守層は怒っていた。昭和天皇誕生日を「昭和の日」としないで「みどりの日」と呼称するのは何事であるか。是非「みどりの日」の呼称を「昭和の日」に改定するべきである―。ゼロ年代後半の保守界隈やネット界隈では、俄かにこの「昭和の日改定運動」が盛り上がったのだが、特に彼ら在野の保守系活動家は孤立無援であった。「昭和天皇誕生日を"みどりの日"と呼称することの違和感」と題したパンフレットを、彼ら活動家はまったくの自費で、新宿駅や池袋駅、渋谷駅で配布した。彼らの大半は自営業者だったが、「昭和の日」実現を目指して全部私費を投じた。仕事が終わるや否や、損得を度外視して新宿駅の街頭に立って、「昭和の日」の正統性を訴えた。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

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