コラム

リベラルは何故こんなにも絶望しているのか~「保守」にあって「リベラル」に無いもの

2021年09月22日(水)15時13分

事程左様に、「民主国家のルールを平然と無視する政権を有権者が結果的に信任し続けていることへの絶望」は、21世紀に入って突如として起こった事ではない。実は、戦後の日本政治の中で常に繰り返されてきた歴史である。今更になって、「絶望した」というのは、私からすると奇異に感じる。ロッキード疑獄を以てしても自民党政権が続いたときの絶望の方が、よほど比較的に絶望の度合いが濃い。野党が弱いのは、冒頭で述べた通りに、「自民党の中にメタ的な野党構造がある」からで、今に始まった事ではない。なぜこんなにも簡単にリベラルは世論から「拒否された」と思い込み、「リベラルの不寛容さがこの状況を招いた」と自虐するのか。短慮に過ぎると思う。

今こそマックス・ウェーバーに学ぶべき

おそらくリベラルは、2009年の劇的な政権交代(麻生自民党から鳩山民主党へ)の成功体験が忘れられないのだろう。1993年における細川連立内閣は、その政権交代劇の首魁である小沢一郎氏、細川護熙氏、羽田孜氏らが揃いも揃って元自民党議員であったように、自民党Aと自民党A´(ダッシュ)の分裂であり、狭義の意味での政権交代とは程遠い。そういった意味では、真に「55年体制の崩壊」が達成されたのは2009年の民主党鳩山内閣成立であったとすることもできる。しかしリーマンショック・東日本大震災などの時代的背景のため、鳩山→菅→野田と続いた民主党政権は3年強で瓦解した。

現在のリベラルは、この鳩山政権誕生時代の政権交代の成功体験を引きずっているが、それは日本の戦後政治史の中で極めて特異な事象であったとするよりほかない。なぜ一度の「挫折」で「リベラルはまちがっていたのではないか。不寛容に過ぎたのではないか」と自虐する理由になるのか。

マックス・ウェーバーはその不朽の名著『職業としての政治』の中で次のように書く。


"政治とは、情熱と判断力の二つを駆使しながら、堅い板に力をこめてじわっじわっと穴をくり貫いていく作業である。もしこの世の中で不可能事を目指して粘り強くアタックしないようでは、およそ可能なこの達成も覚束ないというのは、まったく正しく、あらゆる歴史上の経験がこれを証明している。(中略)自分が世間に対して捧げようとするものに比べて、現実の世の中が―自分の立場からみて―どんなに愚かであり卑俗であっても、断じて挫けない人間。どんな事態に直面しても、「それにもかかわらず!」と言い切る自信のある人間。そういう人間だけが政治への「天職」を持つ。(マックス・ウェーバー著、『職業としての政治』,脇圭平訳,岩波書店,強調筆者)

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

豪GDP、第4四半期は約3年ぶり高い伸び 先行きに

ワールド

米エクソン、近くベネズエラに人員派遣 条件整えば「

ビジネス

米インテルのイアリー会長が退任へ、後継は取締役のバ

ビジネス

午前の日経平均は続落、2100円超安 中東情勢懸念
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られる」衝撃映像にネット騒然
  • 4
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 5
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 6
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 7
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 8
    人気の女性インフルエンサー、「直視できない」すご…
  • 9
    イランへの直接攻撃は世界を変えた...秩序が崩壊する…
  • 10
    「日本食ブーム」は止まらない...抹茶、日本酒に「あ…
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 10
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story