コラム

高市早苗氏の政策・世界観を分析する──「保守」か「右翼」か

2021年09月10日(金)11時59分

一方、歴史認識についてはどうだろうか。高市氏は2003年の衆院選挙で落選し、その期間近畿大学教授を務めているが、その間に産経新聞に寄稿したコラムが象徴的であるので引用する。


現在の政府見解は、平成七年の村山富市首相談話をそのまま踏襲している。「過去の一時期、国策を誤り」「植民地支配と侵略によって」「多大の損害と苦痛を与え」...と痛切な反省とお詫びの気持ちを表明した見解である。

当該戦争が「自衛戦争」か「侵略戦争」かについての判別は、国際法上「自己決定権」が認められている。自ら「侵略行為」と認めた、この不見識な政府見解を修正する作業こそが、日本への愛情を持った次世代を育て得る教育実現への第一歩である。(【アピール】「侵略」認めた不見識な見解修正を2004.12.08,産経新聞)

として村山談話の修正を迫った。「あの戦争は自衛の戦争であった」という考え方は、これまた現在の保守界隈における歴史観のスタンダードとなっている。それによれば、満州事変以降の国策は正しく、朝鮮や台湾は日本の植民地ではなく、日中戦争も南方作戦も侵略ではないという事なのだが、高市氏はこの考え方を完全にトレースして現在に至っている。氏は自身のWEBサイト上のコラムで、


(2002年8月)18日の放送では、「満州事変以降の戦争は、日本にとって自存自衛の戦争だったと思うか?」との田原(総一朗)さんの問いに対して「セキュリティーの為の戦争だったと思う」と私が答えた途端、田原さんがまくしたて始めました。(田原総一朗さんへの反論,2002年8月27日,括弧内筆者)

と書いている。この田原氏と高市氏のやり取りは「サンデープロジェクト」内で行われたものだが、高市氏は番組プロデューサーに田原氏の態度等について抗議している。ここで言う、セキュリティーの為の戦争(自衛戦争)の根拠としては、「現在の価値観で当時の戦争行動の意味を判断するべきではない」旨『Hanada』で明記し、その論拠として1995年、村山富市総理に高市氏が戦争について問いただした経験を回想する。


私が当選一期目だった1995年に、社民党(ママ*筆者注 社会党の誤記か)の村山富市総理(当時)に対して、「総理は『侵略戦争』だと思って戦場に行かれたのか」と質問しましたら、「当時はやはり、そういう教育を受けていたこともあって、お国のためと思って行った」と答弁なさったんですよ。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

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