コラム

自民党重鎮たちの失言を振り返ればわかる、これは「党の体質」だ

2021年02月10日(水)19時52分

要するに、傲慢になったり、権威的になったり、市井の市民感覚からどんどんと遊離していく自民党政治家の感覚というのは、彼らが「老人・老害」ゆえだからではなく、彼らが「もともと」そういった感性や価値観(地金)を持ったまま自民党の重鎮になっただけに過ぎないのである。

つまるところ自民党とは、強い封建的世界観や差別意識、権威主義的発想を内包しているのに、表向きには「自由と民主主義」を高らかに掲げる、という二律背反を平然と並立させて権力を握り続けてきた、「理念なき大衆政党」と言えるのである。

もちろん、自民党議員の全員がこのような価値観を有している訳ではないことを断っておく。自民党議員にも真に「自由と民主主義」の忠実な護持者たらんとする政治家を、私は少なくない数知っているからだ。

が、昨今の杉田水脈代議士による「LGBTに生産性は無い」寄稿や「女性は嘘をつく」発言を観るに、このような封建的・権威的体質は、自民党政治家個人の加齢や高齢化が原因ではなく、自民党という政党が一方で、強固に有している「体質」そのものである。

そしてその体質とは、その自民党を戦後ながらく政権与党の座に選出し続けた、保守的な有権者一部の写し鏡ともいえる。つまりこの問題は、日本社会そのものに未だ残る封建的体質の残滓なのであり、仮に森氏や二階氏や麻生氏を政権中枢から除去しても、有権者全体の民主的自意識が向上しなければ、何ら解決することは出来ないのである。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

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