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岸田首相はDappi疑惑を放置して衆院選を戦うのか
2021年10月、Dappiアカウントのデマによる被害者の一人である立憲民主党の小西洋之議員がTwitterにかけた開示請求によって、Dappiアカウントの運営が「法人」によって行われていたことが明らかとなり、Dappi 法人説がほぼ立証された。そしてその法人の取引先に、自民党があることも分かった。調査が進むにつれて、自民党議員や自民党関連企業名前もあがっており、自民党との強い関連性が疑われている。
もし、自民党や日本政府がDappiに関与していたとするなら、たとえばその法人が自民党からの「ネット工作」の依頼によってつくったアカウントがDappiだったとするなら、これは河井事件に次ぐ政治スキャンダルとなる。政権与党が金を払って、野党に対するデマを流させていたことになるからだ。
オーストリアの件もそうであるように、政権与党が密かに金を払って公論を歪めるような「工作」を行うのは、民主主義の理念からいっても許されない。いわばステルス・マーケティングのような政治工作は、「公開の討論」が行われる場の正当性を毀損するのだ。
ステルス政治工作の怖さ
それぞれの政党が市民に自分達の主張を届けるために、広報活動を行うのは当然だ。自党の考え方や政策を訴え、他党を批判しこき下ろす。しばしば政治的な批判そのものを嫌う人もいるが、対手の問題点を批判するのは健全な政治的議論の一つだ。またそのとき、法令を遵守し最低限の倫理観さえ保持できれば、宣伝活動のために金を払って民間企業の力を借りてもよい。それもまた問題になるようなことではない。
オープンな宣伝活動ならば業者を使っても問題ないのに、敢えてステルス的政治工作を選択するのは、そこに意味があるからだ。Dappiはデマや誹謗中傷が多く、そのために裁判所は小西議員の開示請求を認めた。SNS上では、デマはデマの否定よりも広く拡散され信じられてしまうことが分かっている。政治的なデマの流布は敵対者を貶めるには効果的な手段の一つだ。
しかしデマを流したことが発覚すれば、むしろ流した者の立場のほうが危うくなる。公党の機関や取引相手が公然とデマを流したとあれば組織の危機だろう。従って、デマの流布はステルスのかたちを取るデマだと分かってもいつでも尻尾を切れるようにしておくことで、追求を免れることができる。
汚い工作も厭わないのが政治だという考え方がある。オープンになっている「建前」としての政治の表面と、より直接的で何でもアリの政治の裏面は異なると考える者は、こうしたトカゲの尻尾的な実動部隊を準備する。SNS上のステルス政治工作とは、いわば選挙の際、反社会勢力を雇い対立する候補者の事務所に火炎瓶を投げ入れたりすることのネット版なのだ。自民党には、河井克行元法相が業者に依頼して対立候補を貶める架空のブログ記事を書かせたという「前科」もある。
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