コラム

20代~70代が抱くお金の不安を解消する方法、「老後をなくす」とは?

2023年05月02日(火)11時40分
藤野英人

「お金のまなびば!」より

<老後の不安は、イコールお金の不安。しかし今、「老後」の定義が揺らいでいる>

誰にでもやってくる老後。「ゆとりのある生活を送るためにはいくら必要か」「資産形成の始め方」といった情報はいつの時代も注目度が高いが、お金のプロはどのような見解を持っているのだろうか。

日本の資産運用会社、レオス・キャピタルワークスが運用するYouTubeチャンネル「お金のまなびば!」で公開された動画「【老後を無くす!?】将来のお金の心配を減らす選択肢」で、同社最高投資責任者の藤野英人氏はファイナンシャル・ジャーナリストの竹川美奈子氏と対談した。

竹川氏は2019年に「老後2000万円問題」が勃発するきっかけとなった金融庁の報告書「高齢社会における資産形成・管理」を作成したメンバーの1人だ。

竹川氏は、「高齢社会に備えて一人ひとりの人生設計に必要な資産形成を考えてもらうことが目的だったはずなのに、『2000万円』というキーワードだけが独り歩きしてしまった」と当時を振り返る。

一方の藤野氏は、「報告書の内容自体に違和感はまったくなかった。しかし、この問題を通して、メディアや政治家、さまざまな専門家の金融リテラシーが著しく低いことが明らかになり、愕然とした。それが『お金のまなびば!』を始めるきっかけとなった」と話す。

藤野氏によると、お金について各世代に尋ねると、20代で2位、30~70代では1位になるのが「老後の不安」だという。しかし、いつから老後が始まるのか、どんな状態を老後と呼ぶのかを深く考えている人は少ないだろう。

一般的には仕事を引退し、公的年金などを使って悠々自適に過ごす状態が「老後」と定義されることが多い。だが、現代では退職後も自分のペースでゆるやかに働き続けることができるため、老後の定義はいささか曖昧だ。

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「お金のまなびば!」より

退職するまでお金について考えたことのなかった人が圧倒的多数

竹川氏は自身の人生プランについて、

「時間の配分を少し変えて、好きなことを細く長く続けたい。65歳までは今と同じように働き、70歳にかけて徐々に仕事量を減らし、辞めるかどうかを決断するつもり。でも、オファーがあるうちは何歳になっても働き続けるかもしれない」

と回答。これに対し、藤野氏は「経営者や起業家ほど生涯現役、生涯健康を目指している。仕事の有無が『老後』の境目だとすると、普通の人は老後の不安に備えようとするが、成功した人は老後をなくそうとする」と語る。

プロフィール

藤野英人

レオス・キャピタルワークス 代表取締役会長兼社長、CIO(最高投資責任者)
1966年富山県生まれ。国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。投資啓発活動にも注力しており、東京理科大学MOT上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、日本取引所グループ(JPX)アカデミーフェロー、一般社団法人投資信託協会理事を務める。主な著書に『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『さらば、GG資本主義――投資家が日本の未来を信じている理由』(光文社新書)など。

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