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親日だけじゃないジャック・シラク──フランス人が愛した最後の大統領
フランスの若い世代からはますます好かれ、70歳になっても衰えを見せませんでした。2002年には堂々と極右を破り、2度目の大統領選で勝利。しかし次の5年は下り坂でした。黄昏の兆候は2003年の夏に表れました。フランス国内が歴史的な猛暑に襲われ、高齢者の死が相次ぐ中、シラクは涼しいカナダで夏休みを過ごしました。世論は激怒、支持率も下落しました。
パリでは暴動が起き、失業率も上昇。フランスのテレビ討論番組に出て若い世代とディベートしても、「君たちを理解できない」と、孫のような若い世代との距離を生放送で認め、顔を曇らせたこともありました。
大統領を辞めた後の2010年代には、パリ市長時代の金銭スキャンダルやレバノン元首相からパリの豪邸をプレゼントされていた問題などで支持率が下がり、訴訟、裁判の連続でした。重い神経認知機能障害(認知症)も発見され、ベルナデット夫人との溝が深まり、ますます孤立します。2016年、最愛の娘で身体障害者のローランスが58歳でなくなり、シラクは伝説的な闘争心まで失い、病がさらに悪化して、自宅からほとんど外出しなくなります。ニュースで、公の場に何年も姿を見せなかった、と言われていたのはこのためです。
そして今年の9月27日、86歳で亡くなりました。
博識、驚異の記憶力、気配り
右派左派問わず、大勢のフランス人から愛され、とにかく教養と個性、カリスマある最後の大統領でした。ニコラ・サルコジが大統領に就任した2007年以降はテクノクラート系の大統領が続き、シラクのようにフランクで人間味のある政治家は珍しくなりました。
シラクはドナルド・トランプや習近平にも負けない大柄で、素晴らしいバリトンの声をしていました。外国訪問の際は、その国の文化についての博識ぶりで訪問先を驚かせました。人の名前を一度聞いたら忘れない驚異的な記憶力は伝説になり、他党の議員やエリゼ宮(大統領府)のスタッフなど周囲に対する気配りには誰もが脱帽したものでした。
シラクはロシア語もできて、ロシア、中国、日本などの伝統と歴史ある文化を大変尊敬していました。アフリカ、アジア、オセアニア、南北アメリカの原始美術に捧げられたパリ7区のケ・ブランリー美術館がジャック・シラクの名を冠することになったほどのアート好きで、現代アートも好む包容力のある知識人でした。
とにかく人が好きで、毎年の短いバカンスでは、海辺で散歩する際に極力ボディ・ガードを付けず、地元のビストロで食事をし、必ずマルシェに顔を出しました。
ジャック・シラクは4世代にわたってフランス政界で影響力を発揮し、40年間も政治を愛し、数々の若き政治家をインスパイアしました。長身だったこともあって、文字通り最後の「ポリティカル・ジャイアント」だったと言って間違いありません。
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