コラム

テレビはネットで観るもの? DVDも予約録画もいらない韓国人のテレビ視聴

2016年01月15日(金)12時09分

 一つは、9割を超える世帯がケーブルテレビを受信できる有料放送に加入していること。もう一つはVOD(ビデオオンデマンド)である。

 韓国では難視聴改善のため、1995年ケーブルテレビが登場した。マンションの場合、テレビを買って壁にアンテナケーブルを差し込んでも何も映らないことが多い。ケーブルテレビかIPTVに加入して地上波テレビ再送信を利用するしかない。

 韓国のマンション団地はその地域のケーブルテレビと団体加入契約を結んでいる。テレビを保有する家庭は、電気代に公営放送KBSの受信料が上乗せされ、マンションの管理費にケーブルテレビ利用料が上乗せされる。「うちはケーブルテレビ観ません」といっても通用しない。全世帯が選択の余地なくケーブルテレビに加入しないといけない。そうしないと地上波放送も観られないからだ。

 ケーブルテレビの料金は団体契約なので非常に安く、50チャンネルほど受信できる基本プランだと月4〜500円しかしない。100チャンネル以上観られて画質もいいデジタルケーブルテレビや4Kケーブルテレビは月1000円ほどする。

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 韓国の地上波テレビ局は、インターネットが家庭に普及し始めた1997年から、自社のホームページにテレビ番組の「ダシボギ(다시보기)」を提供し始めた。ダシボギとはもう一度見る、という意味で、テレビで放映した番組をインターネットからもう一度見る、つまりVODのことである。韓国の全テレビ局は、ドラマやバラエティー、ニュースなど、海外ドラマと映画を除くほぼすべての番組をVODで公開している。

 インターネットさえ使えれば、いつでもどこでも好きな時に好きな端末からテレビ番組を視聴できるので、韓国では予約録画がいらなくなった。ハードディスク録画とか、ブルーレイとか、韓国ではあまり馴染みのない言葉である。

 デジタルケーブルテレビ、IPTV、衛星放送に加入している場合、テレビのリモコン操作で見たい番組のVODを視聴できる。料金は月々見放題で1000円以下、都度課金だと1本100〜150円ほどする。リモコン操作で好きな番組や映画のVODが観られるのでとても楽である。

プロフィール

趙 章恩

韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。

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