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コラム
ニューズウィーク日本版編集部 From the Newsroom
欧米メディアは「お辞儀」にうるさい?
少し前のことになりますが、2月5日に行われたトヨタの豊田社長の謝罪会見でちょっと気になったことについて。
欧米メディアの報道に豊田社長の「お辞儀」に注目したり、強調する記事が目立っていたことです。米LAタイムズは記事の冒頭で「期待されていた長くて深いお辞儀ではなく」「たった1秒」と断じ、日本の謝罪会見で見られるお辞儀という文化について詳しく報じていました。
英タイムズ、オンラインマガジンのスレートは、日本のお辞儀の種類やそれぞれの意味について詳しく紹介。他メディアの記事でも、「謝る:apology」に加え「頭を下げる:bow」という表現がやたらと多用され、「ちょっとしか頭を下げなかった」という論調が目立ちました。
思えば、昨年オバマ米大統領が来日して天皇陛下にお辞儀をした際にも、アメリカではこれに反発する「お辞儀騒動」が起きました。反発の理由として、冷泉彰彦氏は「自分の国を代表する大統領が、他国の元首に対して90度頭を下げるというのは、自分を含めたアメリカ人が卑屈になったよう」という見方や、「アメリカの黒人家庭では、子供に『人様に頭を下げてはいけないよ』という教育をする時代があった」という、日米の文化の違いを紹介していました。
なるほど、日本では日常茶飯事であるお辞儀に、アメリカ人が神経質になるのもうなずけます。
これに対して、たしかに日本人はしょっちゅう「会釈」をするし、新入社員にお辞儀の仕方を教えるなどお辞儀はビジネスの基本とされています。
このように「お辞儀に慣れている(することにも、見ることにも)」日本では、謝罪会見で「どのくらいの角度で、何秒間」頭を下げたかを注視して、どれだけ心底謝っているのかを推し量るという感覚は、欧米ほどないように思います。(たしかに謝罪会見で「会釈」していたら「アレ?」と思うかもしれませんが)
逆に、日本で「この人、すごく本気で謝ってる」と特に意識するケースは、「土下座」ではないでしょうか。土下座会見ともなれば、日本でも多少は目立つと思います。その意味では、欧米メディアは今回の謝罪会見を「社長が中途半端に土下座した」というレベルで報じているように感じました。
そう言えば、昨年、米保険大手AIG幹部への高額ボーナス問題をめぐって米上院議員が「(AIG経営陣は)日本企業を見習ってアメリカ国民に深々と頭を下げて謝れ(take that deep bow and say I'm sorry)」と発言しました。この表現、きっと日本で言う「土下座して謝れ!」ですよね。(ちなみにこの議員、「辞職するか自殺しろ」とも発言して、物議をかもしました) 欧米には、「日本企業の謝罪会見」にステレオタイプ的なイメージがあるのかもしれません。
いずれにせよ、世界規模の日本企業が謝罪会見を行う際には、欧米メディアが「どのくらいの角度で、何秒頭を下げた」かに注目していることを頭に置いておいたほうが良さそうですね・・・。(この点、LAタイムズは豊田社長は「企業責任を認めたと思われて訴訟で不利になるのを避けるため」計算ずくで深々と頭を下げなかったと分析しています)
――編集部・小暮聡子
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