コラム

AIで教育を「ど真ん中から変える」Classi加藤理啓氏の思い

2017年12月28日(木)16時30分

──でもど真ん中だけあって、学校教育って取り組みにくいんじゃないでしょうか。

加藤「最初は本当に大変でした。学校に行っても、明確なITの担当部署というものがありません。ITを導入したいというニーズもなければ、予算もない。でも一方で、何か困ったことありますか、と先生方に聞けば、困ったことだらけ、課題だらけなんです。多くの課題は、ITで解決できそうなものが多かった。そこでベネッセの学校カンパニーというB2Bのチームと組むことを思いつきました」

──ベネッセの学校カンパニーって、学校とのパイプが強いんですか?

加藤「そうなんです。進研模試という模擬試験を中心としたアセスメント事業を約60年間に渡って実施していて、全国の90%以上の学校との取り引きがあるんです。先生方との信頼関係もあるし、何より学校の課題を理解していました。そこでソフトバンクとベネッセとの合弁会社としてClassiを設立することになったんです」

──4割もシェアを握ると、いろいろできることが増えてくるんじゃないでしょうか?

加藤「はい。Classiがプラットフォームになり、いろいろなアプリがその上に乗るようになってきています。英語の発音をチェックしてくれるアプリや、プログラミング関連のアプリ、部活の動画編集に特化したアプリなど、おもしろい教育向けのアプリが乗ってきています。

また今後はAIもどんどん導入していきたいと思っています。今は夜中の2時ぐらいに高校生たちがTwitter上で「ここが分かんないよ?」って叫んでいます。そんな子供達が分からないことがあったときにClassiで「分からない」とつぶやけば、ClassiのAIが答えてくれるようになったら、すばらしいなって思います。勉強だけではなく、いろんなことをAIに相談できるようになればいいなとも思います。教育ってITやAIでもっと効率よくできるようになると思うんです。そしてそうしたツールを使うことで、先生方に時間の余裕ができる。その時間を使って先生方が、生徒たちとのつながりをより深めていってもらえればって思っています。

ほかにも、いろいろな企業、機関と組んで、テクノロジーを使った斬新な取り組みのプロジェクトを進めていきたいと思います。先述の貧困の問題や全国に20万人以上いると言われている不登校の子供達など、教育にはまだまだ大きな課題が山積しています。なのでWebエンジニアやAIエンジニアを、多数採用していきたいと思っています。テクノロジーを使って教育のど真ん中である学校を変えたいと思っている方には、ぜひジョインしていただきたいと思います」

──加藤さんご自身は、Classi、もしくは学校教育への取り組みをいつまで続けるつもりですか?

加藤「ずっと続けます。ライフワークとして、残りの人生を賭けるつもりです。絶対に辞めないです。確かにときには大変な障害にぶち当たって、僕もClassiのメンバーもくじけそうになることがあります。でもそんなときわれわれを支えているのは、日本の未来を担う子供の可能性という未来に貢献をしているんだという自負です。この思いがある限り、われわれはどんな課題でもクリアしていけるんだと思います」

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ軍事作戦を大幅に拡大、広範囲制圧へ

ワールド

中国軍、東シナ海で実弾射撃訓練 台湾周辺の演習エス

ワールド

今年のドイツ成長率予想0.2%に下方修正、回復は緩

ワールド

米民主上院議員が25時間以上演説、過去最長 トラン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story