ドイツの街角から
バーデン地方の「ワインと食のハーモニー」を探る旅 その2
黒い森のワイン産地を訪ねて
その1でも紹介しましたが、バーデン地方のブドウ畑の総面積は約1万5800ヘクタール、ワイン産地は北のタウバーフランケン地域から南のボーデン湖地域に至るまで、弧を描くように約400キロにわたって連なっています。その中央に位置するのがオルテナウ地域。よく晴れた日には、ライン川の向こうにフランス アルザス地方のストラスブールも見えるそうです。
オルテナウ地域の気候に大きな影響を与えているのが 黒い森(シュヴァルツヴァルト)。広大な黒い森に囲まれたバーデン地方の比較的涼しい気候の地帯で、主にリースリングやシュペートブルグンダー種が栽培されています。
バーデン地方ワイン女王の故郷・マルクグレーフラーランド地方ワイナリーへ
ドイツ南部のバーデンヴュルテンベルク州ブライスガウホッホシュヴァルツヴァルト地区ハイタースハイムのワイナリー・ツォッツへ向かいました。ユリアン・ツォッツ氏(下の画像)が出迎えてくれました。
黒い森の端に位置するマルクグレーフラーランド地方は、かつてローマ人、そしてマルタ人がブドウを栽培していた場所で、ここがツォッツ・ワイナリーの本拠地となっています。95ヘクタールのブドウ畑を持つこの大家族経営のワイナリーは、長年にわたって力強いワインを生産してきました。
エキスが豊富なブドウ種ヴァイスブルグンダー(ピノ・ブラン)やグラウブルグンダー(ピノ・グリ)、あるいはミネラルを含んだクリーミーなシャスラは素晴らしいワインを生み出しています。
1845年から続くこのワイナリーでは近年人気の高まっているノンアルコールワインとノンアルコールゼクト(スパークリングワイン)を試飲。ドイツワイン協会によると、ノンアルコールはワイン業界の中でも小さなセグメントですが、需要は伸びているそうです。
アルコールフリーのワインを作るには、まずワインを作り、そこからアルコールを取り除きます。その方法として、減圧蒸留があり、減圧下では、分離する液体の沸点が30度まで下がるため、アルコールを穏やかに抽出することができます。このように、アルコールフリーワインは、通常のワインと同じ工程を経て、減圧しても元の香気成分を多く含みますが、アルコール度数は0.5%以下です。
2020年8月の時点では、ワイン消費量に占めるこれらのワインのシェアはまだ1%未満です。とはいえ、ほぼすべてのサプライヤーが売上高を伸ばしていると報告しています。また、ノンアルコールスパークリングワインの場合、スパークリングワインの消費量に占めるシェアは5%程度と、すでにかなり高い水準にあります。
個人の嗜好に左右されますが、ノンアルコールのワインやゼクトはトレンド商品として注目を浴びているのは間違いありません。さらにライフスタイルや個人嗜好の多様化に伴い、ノンアルコール飲料は選択肢のひとつとなって注目を浴びるようになりました。
ワイン法によれば、ドイツの品質ワインとプレディカーツワインは、少なくとも7%のアルコールを含んでいなければならないそう。また特別なブドウ(アイスワインやトロッケンべ―レンアウスレーゼン)では、5.5%が下限といいます。
ワインに必要なのは味であって、アルコールではないという信条のもと、ドイツでは100年以上前にラインガウ地方でアルコールを取り除く方法がすでに開発されていました。
全ては好みの問題で、試飲でもノンアルコールワインやスパークリングワインの評価は様々。ですが、皆でアルコール飲料を囲み、そこで一緒にノンアルコールワインやゼクトを飲みながら、ひと時を楽しむお供として今後も愛好者が増えていきそうです。
次はスパークリングワインと料理のハーモニーを学びます。
著者プロフィール
- シュピッツナーゲル典子
ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。
Twitter: @spnoriko