ドイツの街角から
バーデン地方の「ワインと食のハーモニー」を探る旅 その2
トレードマークは魔女・ワイナリー「ヘックス・フォム・ダッセンシュタイン」 ヘ
オルテナウ地域カッペルローデックは、アッハー渓谷の黒い森の西側、丘陵斜面にある小さな村。高級温泉地バーデンバーデンの南約20㎞に位置します。ここにヘックス・フォム・ダッセンシュタインワイナリーがあります。
このオルテナウ地域は、北はバーデン・バーデンから南はヘルボルツハイムまで、70キロメートル以上にわたって広がります。特徴は、黒い森とライン平野の境界線にある急斜面です。ここでは果樹栽培、特にブドウ栽培が盛んです。
ヘックス・フォム・ダッセンシュタインのダイレクトセールス・マーケッテイング責任者マルティン・ベンツ氏(上の画像左)と醸造マイスターのトーマス‣ヒルト氏(右)が迎え入れてくれました。
ここでは約80のワイン生産者ファミリーが、花崗岩の風化した岩盤の上にある「ヘックス・フォム・ダッセンシュタイン」という素晴らしい土地から一流のブドウを収穫し、醸造マイスターのマルコ・ケニンガーとそのチームが、最新のテクノロジーと伝統的な醸造方法を組み合わせて生産しています。ぶどう種はシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)が6割以上を占め、グラウブルグンダー(ピノ・グリ)とヴァイスブルグンダー (ピノ・ブラン)が2割弱です。
赤ワインは常に伝統的な方法で発酵され、ほとんどが木製の樽で熟成されます。その結果、エレガントで深みのあるワインが生まれ、料理との相性もよく、日常的に愛飲されるワインとして理想的です。
トーマス氏の案内でブドウ畑を見学していると、突然魔女に扮装した女性が現れました。それもそのはず、この周辺にはこんな都市伝説があるとか。なぜ魔女がボトルや広告に使われているのか、不思議に思っていただけに、興味津々です。
昔、ローデック城の美しい乙女が農夫の息子と恋に落ち、領主と父に追われて谷に下り、ダーゼンシュタインの岩窟に隠れ住んでいました。彼女はその岩の周りにブドウの木を植えたので、カッペルローデックの赤ワインには彼女の名前が付けられたといいます。こんな背景からカッペルローデックの人々は、魔女を愛し、この地域と強い絆で結ばれているそうです。
岩窟(上の画像)に美しい乙女が隠れ住んでいたのでしょうか。この伝説は今も村に残っており、カーニバルの行列の際には、子供たちは皆、魔女の衣装を身に着け祝うそうです。
というわけで、魔女ワインはこの地域全体のフラッグシップとなっています。
さらにオルテナウ地域オーバーキルヒェで大きな役目を果たすオーバーキルヒャーワイン醸造家協同組合の成立を聞きました。
1951年10月に創立された同組合(Oberkircher Winzer Eg)は、黒い森の麓、レンヒタール渓谷にある歴史あるワインの町、オーバーキルヒとその周辺のワイン醸造に携わる家族からなる組合だといいます。
現在、総面積約485ヘクタールの畑で、毎年平均約5,000トンのブドウが収穫され、そこから約370万リットルのワインが生産されています。テロワール、花崗岩を多く含むミネラル豊富な土壌、そして特別な気候は、優れた赤ワインと白ワインを生み出す独自の前提条件を備えているそうです。
現在では、オーバーキルヒ周辺の300以上のワイン生産家がこの組合に所属しています。
次は黒い森のワイン産地へ
著者プロフィール
- シュピッツナーゲル典子
ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。
Twitter: @spnoriko