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Hiroshi Shibata|ウクライナ

IT大国ウクライナの驚くべき「スマホの中の国家」戦略 柴田裕史

ウクライナ・ゼレンスキー大統領府デジタル変革省長官、副首相フョードロフ氏(30歳)とともに

2019年7月17日にウクライナの首都キエフでウクライナ大統領府主催の日本企業向けのプレゼンテーションが開催されました。それは同年5月に大統領に就任したゼレンスキー・ウクライナ政権の題して「State in Smartphone(スマホの中の国家)」戦略についての説明会でした。コロナ発生前だったため筆者も日本のIT企業、商社他多数の日本企業を多く招聘することが出来ました。

(詳細は筆者のIT Mediaの記事参照)

その内容は驚くべきものでした。旧ソ連のエストニアが実現したような「ペーパーレス政府」「電子政府」を更に発展させた画期的な内容だったからです。ゼレンスキー大統領はIT業界出身の起業家、エンジニア、実業家などを積極的に新設したデジタル・トランスフォーメーション省の中枢に起用し国家システムを次々に電子化していきました。その指揮を担ったのが当時若干28歳であったミハイロ・フォードロフ氏でした。フォードロフ氏は自ら起業したソーシャルメディア・マーケティング企業の創業者兼社長でゼレンスキー大統領の選挙戦を強烈にサポートし当選に導いたことで政権に参画します。ITを駆使し技術に精通する若き才能を積極的に登用するのがゼレンスキー政権の特徴です。ほかにも大統領のデジタルアドバイザーにIT企業テンプレート・モンスターの創業者であるダビッド・アラハミヤ氏を登用するなど革新的な人事を打ち出しています。

こちらの記事参照)

ウクライナの行政機関のプロセスや政府サービスをすべて電子化し、ウクライナではお年寄りも持っているスマホで行うことが出来るようにすることで旧ソ連時代からの悪弊であった汚職を撲滅しより先進的な国家にウクライナを生まれかえらせる戦略が狙いでした。汚職をなくすことで諸外国からの投資も促進でき、悲願であるEU加盟も促進されるという狙いもあります。

実はこの大統領府主催の直前の2019年の5月23日、ゼレンスキー大統領の就任直後に行われたウクライナ最大のIT見本市のイベントiForumにて大統領はこのビジョンを既に語っていました。ゼレンスキー氏が大統領就任前からウクライナをIT立国にするという強い意思を持っていたという事がはっきり示されたと言えます。

「我が国のIT化の遅れは貴方たちのせいではなく、制度のせいです。皆さんは私の事を夢想家と呼ぶかもしれませんが私はスマホの中の国家、スマホの中の政府を本気で作りたいと考えています。それを作るのは今しかないのです。その実現には皆さまの協力が必要不可欠なのです。」

こちらの記事参照)

それからコロナ禍を経た2021年1月現在の状況ですが行政サービスの電子化は着実に進んでいます。

下記はウクライナのデジタル・トランスフォーメーション省の宣伝動画:

Profile

著者プロフィール
Hiroshi Shibata

Ago-ra IT Consulting及びEE Technologies代表、ITウクライナ協会日本市場担当、日宇複数企業の顧問、代表を兼務。米国、豪州の大学を卒業後、欧米の外資系金融3社のテクノロジー部でアルゴリズム取引開発に10年以上従事。'02年の学生時代に創業。'16年に欧州へ拠点 を移す。世界8か国に在住経験あり。現在キエフにて日本企業向けオフショア開発コンサル業および現地IT企業の日本向けマーケティングを支援。妻はウクライナ人。

Twitter: @agoraitconsulti

Youtube: https://www.youtube.com/channel/UCg2ls_3N96MCtF3z9dYYpIw

note: https://note.com/hiroshishibata

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