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シャーロック・ホームズの世界で活躍する女性たち

Women Bursting Sherlock’s Bubble

2020年10月27日(火)18時20分
ローラ・ミラー(コラムニスト)

ALEX BAILEY/LEGENDARY ©2020

<『エノーラ・ホームズの事件簿』から『ミス・シャーロック』まで、女性が活躍するホームズ物の模倣作品がめじろ押し>

1887年に発表されたシリーズ第1作『緋色の研究』で、医師のジョン・ワトソンが知人に紹介された人物とルームシェアすることになったとき、大衆小説の偉大な聖域が生まれた。ロンドン・べーカー街221Bの下宿で、ワトソンはシャーロック・ホームズと共同生活を始める。

彼らの世界は完全ではないが完璧だった。読者を魅了したのはパイプの煙や変装や射撃ゲームなど、そこにある要素だけではない。規則正しい生活やまともな仕事、性愛といった要素がそこから排除されていることが、この世界の独自性を支えていた。

ファンは次々に発表される新作を心待ちにしていたが、著者のコナン・ドイルは早々にこの世界に飽きてしまい、シリーズにけりをつけようと、ワトソンを結婚させ、1893年の『最後の事件』ではホームズを死なせてしまった。

だが続編を熱望するファンの声に押され、ホームズが生きていたことにして10年後に再び新作を発表。ワトソンもべーカー街に戻り、以後この永遠の名コンビは下宿のオーナー、ハドソン夫人の世話になりながら、また新たな冒険に挑むことになる。

シャーロキアンと呼ばれるシリーズのファンはコナン・ドイルが創造した世界をこよなく愛しているが、おなじみの聖域をいじってみたいという誘惑にも駆られる。

ホームズは典型的な癖の強いヒーローだ。近寄り難く禁欲的。論理的な思考に徹し、色恋沙汰とも無縁。こうした極端な人物像は多くのマニアを引き付けるばかりか、彼らの想像力をかき立て、パスティーシュ(模倣作品)やスピンオフ(派生作品)が量産されることになる。

少女の痛快アクション

シャーロック・ホームズの世界に明らかに欠けている要素は、魅力あふれる主役級の女性だろう。ハドソン夫人は「大きな坊や」であるホームズとワトソンの面倒を見る母親的な存在。ワトソンの結婚相手のメアリーも型にはまった「良き妻」にすぎない。

変わり種はアイリーン・アドラーだ。オぺラ歌手で「女山師」の彼女は、ホームズを知能で出し抜いた4人の人物の1人で、唯一の女性でもある。ワトソンによれば、以後ホームズは彼女を「あの女性」と呼ぶようになったとか。とはいえ、アドラーが登場するのはシリーズ中ただ1作『ボヘミアの醜聞』だけだ。

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