韓国政治がスキャンダルに沈む...尹錫悦大統領の「ディオール論争」と、野党代表の「不正・収賄疑惑」
Political Mess in Seoul
妻のスキャンダルをめぐり与党内からも批判が生じている尹大統領(右) KOREAN PRESIDENTIAL OFFICEーREUTERS
<4月の総選挙と次期大統領選を前に、どちらもスキャンダルにはまった韓国の与野党が国民の激しい反発に直面している>
韓国政界の「ゼロサムゲーム」は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の妻がクリスチャン・ディオールのバッグを知人から受け取ったという「金建希(キム・ゴンヒ)リスク」をめぐって泥沼状態に陥っている。皮肉なことにこのスキャンダルのせいで、2027年の大統領選の前哨戦となる4月10日の総選挙を前に尹と与党「国民の力」だけでなく、最大野党「共に民主党」もリーダーシップが試されている。
国会で過半数を握る民主党は、金に対する捜査を行う特別検察官を任命する法案を可決した。それに対し、尹が1月上旬に拒否権を行使したことで、与党支持者の間でも金に対する疑念が高まっている。
尹政権と与党は、22年5月の就任以来、30%台半ばで推移する尹の支持率の低さに悩まされている。国民の不満は、昨年10月に行われたソウル市の区長補欠選挙で与党の大敗を招いた。それを受けて尹は、「国民は常に正しい」と異例の早さで謝罪。国民の力は、韓東勲(ハン・ドンフン)法相(当時)を暫定的な党トップの非常対策委員長に任命した。
総選挙は接戦となる見込みで、かつてなく予測不可能だと識者らは指摘する。多くの専門家は、与党の最大の問題は尹にあると考えている。
なによりも、尹の独善的な政治手法が問われている。それは党との「主従」関係(尹が「主人」だ)だけでなく、大統領夫人による「権力の私物化」の疑惑についてもだ。
与党の「尹錫悦リスク」
エムブレインパブリックなど4つの調査機関が共同で実施した世論調査によると、尹が特別検察官を任命する法案に拒否権を行使したことは「誤った判断」だと回答者の65%が答えた。
この調査結果は、いわゆる「ディオール論争」に対する強い国民感情を反映している。金は、在米韓国人牧師から高価なディオールのバッグを受け取るところを隠し撮りされ、その映像をリベラル系ネットメディア「ソウルの声」が昨年11月にYouTubeで公開した。尹はこれをはねつけたが、金に謝罪を求める声が与党内に広がり、尹と韓が真っ向から対立した。
尹にとっての「金建希リスク」は、与党にとっての「尹錫悦リスク」になっている。