コラム

気候変動とエネルギー、G7のご都合主義リーダーシップに限界か

2022年08月25日(木)19時40分

ウクライナにおける戦闘は2023年の冬を越えて長期化する見通しとなっている。

仮にロシア側がG7の実効性がない原油価格の上限設定を建前とし、冬を狙って第三国に対するエネルギー供給を意図的に制限した場合、原油先物の取引価格は一気に跳ね上がることになるだろう。それはロシアにとっても危険な賭けではあるが、西側諸国の結束に致命的な打撃を加えることも可能な選択肢だ。この状況下において世界経済を混乱に陥れるためのカードをロシアにあえて渡す行為は愚策そのものだ。

ウクライナとロシアを巡る問題が長期化することを前提とし、今後も様々な外交的な駆け引きが継続・発生することを念頭に置くべきだ。したがって、原油取引の上限価格を設定するという「実効性が伴わない上に、第三国からの支持を失う可能性がある」政策を検討・実行することは、長期化する戦闘の状況に鑑み不適切な行為と言えるだろう。

欧米は対ロシアという文脈に囚われすぎて合理的な判断ができなくなっているのではないか。日本政府には第三国の現状などを踏まえG7唯一のアジアからの参加国として冷静な提案を再度行うことを求めたい。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

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